◆新素材・     糸 を 使 っ て 巨 大 タ ン パ ク 質 を 分 離
 先端技術◆

 生体に必須の構成成分であるタンパク質の分離には,これまで二次元ゲル電気泳動法が用いられてきた.しかし本法はゲルの取り扱いや巨大分子の分離に難があり,汎用されてはいない.本研究では,円柱状の一次元目のゲル中に糸を通したゲルを開発した.このゲルは通常のゲルより強度が大きいため,ゲル濃度を下げることが可能で,大きな泳動速度による高速分離をもたらした.更にはこれまで難しかった巨大分子の分離も可能となった.長さを半分(4 cm)にしたミニチュアシステムにより更なる時間短縮に成功しており,疾患の高速診断やスクリーニングなど幅広い応用に期待が持てる.

【P2024】     糸を支持体とする一次元目ゲルを用いるミニチュア二次元ゲル
           電気泳動システムによるタンパク質の高速分離

(群馬大工)○亀澤一寿・茂木健・宮田梢・小竹玉緒・堀田弘樹・角田欣一
[連絡者: 角田欣一,電話:0277-30-1250]

 タンパク質は生体に必須な構成成分で,生命活動を維持するために必要なはたらきを担っており,生体中のタンパク質の分析は重要である。タンパク質には様々な種類があり,それらを一度に解析するのは難しい。二次元ゲル電気泳動法(2DE,図1(a))は,等電点と分子量の違いによりタンパク質を一度に分離する方法であり,もっとも分離能に優れている。しかし,ゲルの取り扱いや分子量100 kDaを超えるタンパク質の分離が難しく,分離に時間がかかるなどの問題があり,汎用されてはいない。そこで演者らは,特に取り扱いが難しい一次元目ゲルを改良した。すなわち,円柱状の一次元目ゲル(直径1mm,長さ7cm程度)中に糸を通したゲル(糸ゲル,図1(b))を開発し,ゲルの取り扱いを容易にした。また,糸ゲルは通常のゲルより強度があるため,ゲル濃度を通常の4%から2.5%まで下げることができた。ゲル濃度を下げるとゲルの細孔径は拡大するので,タンパク質の泳動が速くなり,高速分離が可能となるだけでなく,これまで難しかった分子量の大きいタンパク質を分離できた。
 本研究では,分離をさらに高速化するため,糸ゲルの長さを約半分(4cm程度)にしたミニチュア2DEシステムを開発した。泳動距離の短縮により,これまで半日以上かかっていた操作が2時間以内でできるようになった。本法は疾患の高速診断,スクリーニング法として,また泳動に時間がかかる分子量の大きいタンパク質の高速2DE分離法として有用であると期待できる。