生活文化・     色 で わ か る 匂 い セ ン サ
 エネルギー
 匂い成分の分析法は数多くあるが,人間の嗅覚に相当するセンサの開発は古くから望まれていた.本研究は,匂い成分を含むガスを色素をコーティングした光ファイバに導入し,匂い成分による色素成分の色変化を検知するものであり,匂い成分濃度に応じた色素の色の変化が見られた.また,2種類の色素の色変化から匂いのマッピングも可能になった.匂いを構成している個々の成分を分析するのではなく,複雑な匂い中の主成分分析を行うことで,人間の嗅覚に相当する匂いセンサができるものと考えられ,食品分野での応用が期待される.

【B1024】     色素分子の色変化を利用したファイバ型匂いセンサの開発

(大分大工)○井上高教・高野穣輔・岩野浩和・倉内芳秋・大賀一也
[連絡者:井上高教,電話097-554-7898

 人間の嗅覚に相当するセンサの開発が望まれている.匂い分子種が複雑で,それぞれを特定するのは困難であり,またセンサに選択性を付与するのも難しい.一方,半導体を使ったセンサも少しずつ開発されている.本研究では,色素をコーティングした光ファイバを用いて,匂いガス成分による色素の色変化・光強度の変化を利用した光ファイバセンサを開発することを目的としている.
 石英製光ファイバの中間部分のクラッドを除去し,(アリザリンイエロー色素+ポリマー)/メタノール溶液にファイバをディッピングし乾燥させ,応答膜とした.他にメチルレッド色素やチモールブルー色素とポリマー膜の組合せでも作製した.ファイバにハロゲンランプ光を照射し,透過スペクトルを測定した(図1に装置を示す).サンプルガスにはメタノールや柑橘類の匂いのリナロール,コーヒー豆を用いた.
 透過スペクトルは,光源の波長分布,ファイバの透過特性や応答膜の吸収の合計として得られるので,空気を流した場合の透過スペクトルをブランクとして各時間から引くと,色変化した分の反射光強度が変化した.アリザリンイエロー色素/ポリマー膜に対するリナロールガスの時,約10%強度変化があった.他の組合せの膜でも応答が得られた.また,応答量はガス濃度に依存しており,約10ppmでも応答は得られた.色変化をRGB(赤緑青の3原色)で解析し,そのグレーレベル値の変化量を応答信号に使い,様々な色素の組合せを用いることで,センサに選択性を持たせた.コーヒー豆のような複雑な匂いでも,主成分分析を行うことで,匂いのマッピングが可能であった(図2).
【文献】西村聡,井上高教,倉内芳秋,大賀一也:分析化学,54,51(2005).

図2 主成分分析の結果
図1 装置図