生活文化・     香 気 成 分 の 分 析 か ら 穀 物 の 品 質 を 評 価
 エネルギー

 穀物の品種や品質の評価には香気成分(フレーバー)の分析が有効である。ここでは,穀物を加熱した際に生じる微量の揮発成分を捕集管で濃縮した後,ガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。穀物のフレーバー分析では,穀物に含まれる水分の妨害が問題となるが,加熱温度,捕集条件及び測定条件を最適化することにより,玄米,小麦粉,そばから100種類以上の化合物を検出することができた。本法は少量の試料で簡単に測定できることから,穀物の品質評価法として極めて有用である。

【P2047】      穀物に含まれる微量香気成分のHSトラップ法による分析

(パーキンエルマージャパン・食品総合研究所1)○世古民雄・臼倉浩一・恩田宣彦・堀金彰1
[連絡者:世古民雄,電話:06-6386-6004]

[目的]穀物に含まれる香気成分は、品種、品質の評価をする上で重要である。固体試料中の揮発成分の分析に有効なHSトラップ法による分析条件の最適化を検討するとともに各種試料のフレーバー分析を行った。
[実験方法]試料からの揮発成分の分析は、HSバイアルに採取したバイアル内の気相ガスをトラップ管に捕集・濃縮した後、加熱脱着してGC/MS分析するHSトラップ法を用いた。装置はパーキンエルマー製TurboMatrixATDおよびClarus 500GCMSを用いた。
[結果]分析条件として、加熱温度150℃または100℃、加熱時間30分、抽出回数1回、トラップ剤AirMonitoring、トラップ温度40℃、ドライパージ時間30分、脱着温度280℃とした。100℃以上の加熱では、穀物に含まれる多量の水分の影響を避けるため、試料量を少量にする必要があった。また、気相ガスの濃縮において水分を除去するドライバージ工程が重要であった。加熱温度150℃におけるそば5粒(113mg)のTICクロマトグラムを図に示す。玄米、小麦粉、そばなどの穀物からフレーバー100種以上の化合物を検出した。特に水蒸気蒸留法では得にくいアセトアルデヒド、メタノールなどの低揮発性成分を容易に検出した。これらの成分は、アミノ酸、脂肪酸、糖類などが熱分解して生成されるとされ、加熱温度が高いほどピラジン類など多種多量の成分が検出された。穀物の加工あるいは調理されることの多い100℃においても、穀物種の特長的な成分が検出された。そば一粒における、フレーバーの一つであるヘキサナールの濃度は8.6〜15.7ng/gであった。HSトラップ法を用いることにより、少量の穀物試料で簡便に製品評価できるものと期待される

図 そばのフレーバー(加熱温度150℃)