生活文化・     色 調 変 化 か ら 簡 単 に 室 内 の ダ ニ の 量 を 測 る
 エネルギー

 今,ハウスダスト中のダニが注目されている。ダニの死骸や糞に含まれる抗原が,ぜんそくやアトピー性皮膚炎の原因になるため,室内のダニの量の測定は重要である。本研究では,ダニ抗原のプロテアーゼ活性に着目し,プロテアーゼによる分解で明確に色が変わる物質を合成して,その色調変化から目視で室内のダニ量の測定が可能な方法を開発した。実際の家庭のハウスダストを用いて検討したところ,本法で得られた吸光度とELISA法によるダニ抗原量の間には正相関が認められた。本法は極めて簡便であるため,家庭でできるダニ抗原の測定法として広く普及するものと期待される。

【J1027】      環境中のダニ抗原の測定の開発〜色変わりによる測定

(JST CREST・慶大理工)○本田亜希、岩澤尚子、鈴木孝治
[連絡者:鈴木孝治、電話045−566−1568]

 ハウスダスト中のダニの死骸や糞中に存在する抗原は高いアレルゲン性を有し、ぜんそくやアトピーの原因になることが知られる。ダニの量は適切な清掃により減少させることができ、室内のダニの量を知れば、その室内の清掃が十分に行われているかの指標となる。我々は室内のダニの量を、そのプロテアーゼ活性に着眼し、色変化により測定する非常に簡便な試薬の開発を行った。
 そこで着眼したのがダニ抗原の有するプロテアーゼ活性である。我々はプロテアーゼにより分解されるとメチルクマリンが遊離し、蛍光をを発するような基質を用いて、ダニ抗原の定量に有効に用いられる基質のスクリーニングを行い、その結果、Met-MCA, Lys-MCA, Boc-Val-
Leu-Lys-MCA, Boc-Gln-Ala-Arg-MCAなどの基質はダニ抗原量を知るための指標として用いられることが分かった。
 さらに蛍光装置などを必要とせず、簡便に行えるダニの測定方法を確立するため、蛍光色素に変え、ヒトの見やすい吸光を示す色素で、プロテアーゼによる分解で明確に色が変わるような基質を合成した。具体的にはアミノ基を有する色素であって、アミノ基がアミド結合に寄与している場合と、そうでない場合で吸収スペクトルが変化するもののスクリーニングを行い、そのうち、クレジルバイオレット、メチレンバイオレットにアミノ酸を結合したものは明瞭な色変化を呈することを発見し、これらを有するプロテアーゼ基質の合成を行った。メチレンバイオレットを有する基質(KSP2003)はダニ抗原の測定に用いることができ、ELISAと相関の高い結果が得られた(図)。