◆環境・防災◆    ミ ツ バ チ が 教 え る 環 境 汚 染

 環境汚染状況の調査は、特定の狭い範囲で行われることは多いが、全国的規模となると、共通の指標を何にするか、その指標物質を日本全土に渡ってどのように採取するかなど難題が多い。本研究では、ハチミツの中に養峰所周辺の数km範囲の土壌や大気の状態が反映されていることに注目した。ハチミツ中の微量金属濃度を分析するための試料処理方法を構築し、蛍光X線分析により含有する多くの微量金属元素を一度に定量した。その結果、蜜源としての植物種のみならず、環境の地域特性を反映した元素パターンが得られた。これにより新しい環境評価地図が作成できるものと期待される。

【P1057】       ハチミツ中の微量金属分析による環境評価

(金沢大理)○宮川裕之・松本 健
[連絡者:松本 健,電話:076-264-5693]

 これまで特定地域の環境汚染調査は行われてきたが,汚染のない多くの地域を含めた日本全土に渡っての環境汚染状況がどのようになっているか,その現状を調査・把握することはこれからの環境問題を適切に対応解決するための基礎データとして極めて重要である。
 しかしながら,(1)環境の状況を反映した共通の指標物質は何か,(2)その物質を誰がどのように採集するか,(3)日本全土を隈無く網羅できるか,を考えると極めて難しい課題である。
 本研究は,(1)〜(3)を満足するものとして,「ハチミツ」に注目した。すなわち,ハチミツは蜜蜂によって養蜂所周辺の数km範囲の植物から採集されるため,その土壌・大気状態がハチミツ中に反映されていると考えられる。また,全国には図1に示した800以上の養蜂業者がハチミツを採集していることから,全国のハチミツ中の微量金属濃度を分析すれば日本全土の環境評価マップを作成できることになる。先ず,ハチミツの主成分である糖(80%)を分解する迅速な分解・処理法を新たに構築し,得られた灰分を蛍光X線分析(XRF)によりハチミツ中の微量金属を多元素同時分析した。各地のハチミツ試料を蜜源植物ごとに比較し,含有微量金属元素が地域特性由来なのか,植物由来なのかを検討し,ハチミツの有効性を確かめた。
 アカシア蜜ではFe≫Zn≫Rb>Mn>Cu,レンゲ蜜では Fe≫Zn≫Mn>Rb>Cuの元素パターンとなるが,元素の大小関係が入れ替わる試料やSr,Ba,Niを含む試料があり,地域特性の要因が関係していると考えられる。また,数種の植物から採蜜される百花蜜の元素パターンに規則性はなく,Sr,Pb,Tiを含む試料があり,ハチミツに含有される微量元素は蜜源植物だけではなく環境の地域特性を反映していると推測される。全国のハチミツ分析から地域の環境汚染状況を見積もることができるため,新規な環境評価マップが作成できると期待される。

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