◆環境・防災◆ 輸入ほうれん草に残留する有機リン農薬を分析するための前処理法の開発

 近年、輸入野菜から種々の残留農薬が検出され、消費者の関心が高くなっている。今回、シロアリ駆除に用いられている有機リン殺虫剤クロルピリホスの分析法について検討した。本分析法で問題となる試料中のクロロフィルやカロチンや脂質の除去をDEAE Sepharose CL-6Bを用いた固相抽出法により行い、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析を行った。その結果、本法ではベースラインの安定した測定が可能となり、検出範囲も10-6〜10-12 Mの測定が可能となり、輸入したほうれん草などの実試料に応用することができた。

【P1055】   クロルピリホスの固相抽出を併用したHPLC分析法の検討

(岡山理大・理) ○森由香・仲谷章・荒井正人・古庄健治・小嶋健博
[連絡者:小嶋健博,電話:086−256−9435]

 国内の食糧自給率は40%と言われ、輸入食品への依存度が年々増大している。近年、輸入野菜から種々の残留農薬が検出され、特に輸入食品について消費者の関心が集まるようになった。環境の保護、人間の健康を考えるとこれらの残留農薬の高感度、迅速、そして信頼できる分析法が求められている。分析対象とする農薬、クロルピリホスは農業やシロアリ駆除などに多く使われている有機リン系殺虫剤である。現在、厚生労働省において食品に残留するクロルピリホスの限度量が決められている農産物は約130種ある。有機リンの定性には活性試験、DTNB法、Hestrin法、さらには薄相クロマトグラフィーを用いる。定量にはHPLC、GC/FTD、GC/MSや免疫・抗原反応を利用した方法がある。
 今回は固相抽出法(SPE)による試料中のクロルピリホスの濃縮法について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析で妨害となる試料中の成分クロロフィル、カロチンや脂質の除去について検討した。試料は、輸入野菜としてほうれん草を対象とした。
 厚生労働省で定められているほうれん草のクロルピリホスの残留限度量は0.01ppmであり、クロルピリホスのHPLCにおける検出限界は40ppbである。0.01ppmクロルピリホスがほうれん草に含まれていると仮定すると、試料を25gとり粉砕・濾過した後SPEを用いて濃縮すると検出可能となる。実試料にはクロロフィルやカロチンなどの多くの妨害となる成分が含まれている。しかし、SPE法のみでは、HPLC分析でのピークに妨害成分が重なり、クロルピリホスの検出が不可能となる。そこで、前処理として大きな妨害となるクロロフィルを沈析させた。この沈析処理だけではクロロフィルを完全に除去できなかった。クロロフィルなどの分離に用いられるDEAE Sepharose CL-6Bで処理を行った。その結果、クロルピリホスのクロマトグラムは、ベースラインが安定しクロルピリホスを検出することが可能となった。また、QCAによる検出範囲は10-6〜10-12Mであり本研究に使用した試料からはクロルピリホスもカルバメートも検出されなかった。