◆新素材・    糖類、アミノ酸等の生体構成物質を分析する新たな小型旋光計の開発
 先端技術◆

 生体構成物質には旋光性を示すものが多いので旋光計を利用して糖質やアミノ酸の定量、定性、純度検定等が行われている。従来の旋光計では、旋光度を計測するためにファラデー素子が使われているので規模が大きく消費電力も大きい。本研究では、液晶素子を用いた新たな旋光計を開発した。液晶素子に対する外乱を阻止するため液晶素子を2枚使用し配向方向が互いに直交するように配置し、参照用の光学系により安定した測定を可能とした。試作装置は外形サイズが長さ 154mm、幅 40mm、高さ32 mmと小型であり、低電力である。低コスト機として実用化が期待できる。

【P1079】       液晶素子を用いた小型旋光計の開発

 (シチズン時計株式会社)○福田匡広・松本健志・矢野敬和
[連絡者:福田匡広,電話:04-2943-5292]

 旋光性とは、直線偏光が特定の媒質を透過するとき、その偏光面(光の振動方向)が透過距離に比例して回転する現象のことで、旋光計はこの偏光面の回転の方向と角度を測定する装置である。生体の構成物質には旋光性を持つものが多く、旋光計は主に、旋光性を有する糖類、アミノ酸、ビタミン、ホルモン、アルカロイドなどの定量・定性・純度検定など広く用いられる。従来の旋光計においては、ファラデー素子を用いて光を旋光させる、検光子を機械的に回転させて透過光を検出する、などの方法により旋光度測定を行っていた。
 本研究では小型・低電力での駆動が可能で、かつ低コスト化の実現が可能な液晶素子に着目し、液晶素子を用いた小型旋光計の開発を行った。光源からの直線偏光を液晶素子に入射し、液晶素子へ印加する電圧を変化させる事により光の位相を変調させる。これをλ/4板(波長板)に入射する事により直線偏光の偏光面を振動させる事ができ、次にその光線を測定対象の試料に入射する。ここで、光線が試料を通過する際、試料中の旋光性物質により光線の偏光面の振動範囲が変化するため、検光子を透過してきた光信号を解析することにより試料の旋光度を算出することが可能となる。本研究では、液晶素子を2枚使用し配向方向が互いに直交するように配置する事で、液晶素子に対する外乱の影響をキャンセルし、また参照用の光学系を設け参照信号をフィードバックする事で安定した測定が可能となった。今回試作した装置(外形サイズ:W40xL154xH32mm)を用い、D−グルコース溶液を試料として行った実験により、高い精度で安定な旋光度測定が可能である事が確認され、本手法は小型・低電力かつ低コストの旋光計として実用化が期待できる。

図 液晶を用いた
  旋光計の構成