◆新素材・
 先端技術◆
 熔融ゴミ焼却灰をコンクリートの骨材に

 ダイオキシンを分解し,さらに重金属を揮発除去するために,かなりのコストをかけて高温炉(1300℃)での焼却灰の溶融処理が行われている。しかし,排出される溶融スラグから鉛の溶出が危惧され,路盤材や土木資材としてリサイクル利用されていない。この溶融スラグとコンクリートの細骨材(砂)と種々の割合に置換したコンクリート試料を作成し,圧縮強度試験,鉛溶出試験を行った。スラグ置換率10〜100%のすべての試料について充分の強度があり,鉛の溶出濃度は検出限界0.001 mg/dm3以下であった。これはコンクリートが鉛を強く吸着する性質を持つためである。

【P2096】   溶融スラグを細骨材とするコンクリートにおける鉛溶出抑制効果

(北見工大)伊藤純一・土田真弓・戸原拓哉・小俣雅嗣
[連絡者:伊藤純一、Tel/Fax:0157-26-9400]

 一般廃棄物の焼却処理については賛否種々の議論が続いており結論は出ていないが、明らかに有効と言えるオルタナティブも無いのが実情である。国土が狭く最終処分場の立地に困窮している我が国の現状としては減容率の高い焼却方式が既にかなり普及しており、その方向は変わらないように思われる。この焼却処理方式に対する懸念としてダイオキシンの発生と焼却灰に濃縮される重金属の最終処分場からの溶出の問題がある。近年、焼却灰に含まれるダイオキシンを分解し重金属を揮発除去する目的で、1300℃程度の溶融炉で灰を溶融処理する技術が進んでいる。灰を溶融処理し冷却したスラグは元の灰中の重金属、特に揮発性の鉛やカドミウムが数分の一以下となり土壌の環境基準はほとんどクリヤし、路盤材など土木資材としてリサイクル利用の可能性がある。ところが高額の設備費や維持費を費やしたにもかかわらず、溶出基準を特に鉛においてクリヤできないか又はその不安があるなどの理由で最終処分場に埋められるスラグが多いことが全国各地の溶融炉を持つ自治体で問題となっている。我々はスラグの有効利用の一つとしてコンクリートの細骨材として利用する試みを行っているが、溶出基準をかなり上回るスラグを用いてもコンクリート化することにより、ほとんど鉛は溶出しなくなるという興味ある結果を得た。
 鉛1000〜2000mg/kgを含む流動床燃焼炉からの焼却飛灰をプラズマ溶融炉で溶融したスラグ中の鉛は40〜120mg/kgの範囲で土壌の環境基準(含有基準)を下回ったものの溶出試験では平均0.087mg/dm3と溶出基準0.01mg/dm3を上回った。このスラグを細骨材(砂)と種々の分率で置換したコンクリート試料を作成し圧縮強度試験および環境庁告示第46号試験を行った。スラグ置換率10%〜100%のすべての試料についてスラグ置換コンクリートのTR(日本工業標準調査会H14)に定める圧縮強度設計基準24N/mm2を上回る強度があり、鉛溶出濃度はほとんどの試料において検出限界0.001mg/dm3以下であった。これは高濃度の鉛溶液による吸着試験の結果アルカリ性領域においてコンクリートが鉛を強く吸着する能力を持つためであることもわかった。