◆医療・生命◆ 遺伝子診断や遺伝子治療を支えるDNA一塩基変異の簡便な検出法の開発
 遺伝子診断や遺伝子治療などの医療が展開され,DNAの一塩基変異の測定法が注目されているが,コストが高く測定が煩雑であるなどの課題もある。今回,切断されたDNAの相補対をつくらない塩基部分に,認識試薬として蛍光分子(AMND)を適用すると,塩基の種類によりAMNDの蛍光消光が異なることを見いだした。このことより,一塩基の違いを目視により検出が可能となった。本法は特殊な酵素の導入や蛍光ラベル化などの高価な化学修飾を必要とせずに一塩基変異を検出できるため,DNAプローブの設計に応用でき,テーラーメイド医療への応用が期待できる。

【D2005】   DNA 二重鎖のギャップ構造を利用する一塩基変異蛍光検出法

(東北大院理・CREST)○清野丈博・西沢精一・吉本敬太郎・寺前紀夫
[連絡者:寺前紀夫,電話:022-217-6549]

 ヒトゲノム解析計画が完了し、膨大な遺伝子情報を基盤とする遺伝子診断や遺伝子治療などの画期的展開が期待されている。遺伝子情報の中でも疾患や薬剤の効力、副作用の原因となる、DNA中の一塩基の違い、すなわち一塩基変異が最も注目されており、その安価、簡便かつ迅速な検出法の開発は、「テーラーメイド医療」の実現に向けて重要な課題の一つである。
 本研究ではDNAギャップ形成、並びに水素結合性小分子を併用する、新たな一塩基変異蛍光検出法を提案する。ギャップとは、図に示したようにDNAが切断され、相補対を作らない塩基がある構造をさす。本手法は、ギャップが標的塩基の向側に位置するようにDNA二重鎖を形成させ、その空間において水素結合を利用して標的塩基を識別するものである。(図左)
 認識試薬としてAMNDを用い、本系をモデル配列に適用した結果、標的塩基がシトシン(C)の場合に著しい蛍光消光が観測されるのに対し、グアニン(G)の場合には消光が観測されない(図右)。このようにして、一塩基の違いを目視蛍光検出することが可能である。

本法は、従来法とは違ったアプローチにより、
・検出系への特殊な酵素の導入や蛍光ラベル化などの
 高価な化学修飾をまったく必要とせず、安価な検出
 が可能
・フルマッチ/ミスマッチの熱力学的安定性の違いを利
 用するのではなく、小分子によりピンポイントで標
 的塩基を認識するため、DNAプローブの設計・温度条
 件の設定が容易
という特長を有するため、優れたコストパフォーマンスと簡便性を兼ね備えた一塩基変異検出法として期待できる。