◆ 新素材・    試料溶液を流しながら分析する小型軽量光計測装置の開発
 先端技術◆   

 金の薄膜に光を当てた時、ある入射角度(共鳴角)で光の反射率が大きく変わる。また、金薄膜上に抗体やDNAなどの試料がある場合には薄膜としての屈折率が変わるため、これによって共鳴角が変化する。この現象を利用した高感度分析法が表面プラズモン共鳴(SPR)法であるが、これまでの市販装置は大きく、かつ高価であった。この研究では、総重量6.5 kgと小型軽量で持ち運び可能なSPR装置を開発した。更に試料送液用のポンプや試料導入コックにも工夫を凝らすことにより、再現性のよいフロー式測定が可能になった。
【2E10】 携帯型表面プラズモン共鳴測定装置の開発

  (東大先端研1、アイシンコスモス研究所2、東大医学系研究科3)
   ○中川英元1,2、斎藤逸郎1、遠山貴博2、奥村幸司2、鎮西恒雄1、井街宏3
  [連絡者:中川英元、Email:nakagawa@bme.rcast.u-tokyo.ac.jp]
  
 表面プラズモン共鳴(SPR)測定は金薄膜上に固定された抗体やDNA等の生体反応を共鳴角変化から実時間測定できる方法として注目されている。蛍光物質や放射性物質で対象を標識することなしに測定できる点は大きな利点であるが、観測される角度変化は1/100°程度と小さく、高い光学測定精度が要求され、従来の装置は大型で高価なものが多く、可搬性に乏しく手軽に測定する汎用測定装置とは言い難かった。フォトダイオードアレーを使って小型化した検出器や小型のSPR測定装置もないわけではないが、再現性のよいフロー式測定を行うには研究者がポンプ等を組み合わせてシステムをくみ上げる必要があり、使用できる研究者が限られていた。
 今回、共鳴角測定を行うためのステッピングモータをマイクロステップ制御することで必要な分解能を得るためのギヤー比を下げ、小型軽量化した装置の試作を行った。試料送液用のポンプやサンプル注入コックなどにも小型のものを使用した結果、装置自体は240W×260D×200Hmm3(除ツマミ・突起部)のケースに収まり、重量も約6.5kgと持ち運び可能で、操作および測定は本体の上に乗せたサブノートパソコンより制御可能な装置にまとめることができた。制御には「Igor Pro」ソフトを使用した。測定試料を右の写真にあるシリンジよりサンプルループ内に注入し、測定ボタンをマウスでクリックすることで測定が行われる。