◆ 新素材・    環境規制強化に対応する電子部品プラスチック中の
 先端技術◆   有害金属元素の新規分析法の開発

 電子・電気機器に対する近年の環境規制の強化を受けて、電子部品に使用されるプラスチック中の有害金属元素(カドミウム、鉛など)を定量するニーズが急増している。しかし従来は試料を分解して液体にする前処理が煩雑なため分析は容易ではなかった。そこで、レーザーアブレーションICP質量分析法によるプラスチック中微量カドミウムの定量方法を開発した。プラスチックの主成分元素を指標としてレーザーによる試料かき取り効率の変動を相殺した結果、従前の手法に近い分析値が得られた。本法は他の元素にも適用可能で、迅速かつ高感度な多元素分析に期待が持てる。
【2H12】 LA-ICP-MSによるプラスチック中の有害金属元素の分析

  (TDK(株)開発研究所) ○大石昌弘、福田啓一、川島 康、吉田知生
  [連絡者:大石昌弘,E-mail:moishi@mb1.tdk.co.jp]
  
 電子・電機機器に対する環境規制は世界的に厳しさを増しており、2006年からEUにおいてWEEE/RoHS規制が始まる。この中のRoHS規制では電子・電機機器でのカドミウム、鉛、水銀、六価クロムなどの使用が禁止される。電子・電気機器メーカーにおいてもPbフリー化やグリーン調達への取り組みなど環境に対する取り組みは急速に進んでいる。中でも電子部品に使用されるプラスチックは近年、有害元素(Cd,Pb等)の規制が強化されており、今後はさらに規制元素が増える傾向にある。これらのプラスチック中の有害元素は一般には湿式分解−ICP-AESもしくはICP-MSなどにより分析するが、無機物を含有する樹脂などは湿式分解に時間がかかることが多い。固体のまま簡易に分析する手法として蛍光X線分析を用いるのが一般的であるが、有害元素の規制濃度に対し感度が十分であるとは言い難い。このように現状では簡易かつ高感度に有害元素を分析することは困難であった。
 本研究ではレーザーアブレーション(LA)-ICP-MSを用いてプラスチック中の有害元素(Cd)の分析法の検討を行った。LA-ICP-MSは高感度に固体の元素分析を行える装置であるが、試料形状や表面状態によりアブレート効率が変化し定量値が変動してしまう欠点を持つ。この問題を解決するため、LA-ICPMSにおいて全質量数(2〜260)を測定質量数とし、プラスチック中の主成分元素であるC、S、Clなどを規格化元素に用いることにより半定量値の精度および正確さ向上の検討を行った。その結果、標準試料を用いた検量線法と比較して、樹脂試料、ポリエチレン試料、塩化ビニル試料などの試料において主成分元素を用いた規格化法で湿式分析値に近い値が得られた。この方法を用いた試料の分析時間は1試料当たり5分で、Cdの定量下限は1ppm以下であった。以上のことから本法はプラスチック中の有害元素を簡易かつ高感度に分析する手法として有用であると言える。さらにこの方法では全元素を測定しているためCd以外の元素にも適用が可能である。