◆医療・生命◆  尿中のタンパク質を赤色のドットで簡便・高感度に測定
 アルブミンなどの尿中タンパク質の検出は、腎炎や糖尿病の早期診断のために重要な指標であるが、従来の方法では、感度や簡便性及びコストの面で多くの問題があった。そのためタンパク質溶液を膜に滴下するだけで、煩雑な操作がなく、高感度に目視判定できる方法を開発した。セルロースアセテート膜に試料溶液と染色液の混合物を滴下すると、タンパク質を含む溶液では赤色の鮮明なドットが生じるため、目視により従来法に比べて1桁以上高感度に判定することができるようになった。
【2D15】   セルロースアセテート膜を用いる新しいドットブロット法の開発

  (北見工大工・東北大工1・(株)シノテスト2) ○穴田 哲也・齋藤 伸吾・星 座 ・金子 恵美子1 ・津田友秀2・芳村 一2
  [連絡者 : 金子恵美子,E-mail : emiko@sda.att.ne.jp]

  
 尿中の主要タンパク質であるアルブミンの検出は、慢性腎炎や泌尿器系疾患および糖尿病等の早期診断のために重要な指標である。従来の検査法としては、色素結合に基づくタンパク質の溶液吸光光度法(クマシブリリアントブルー,ピロガロールレッド-モリブデン錯体法等)や試験紙法が挙げられる。しかし、これらの方法は、感度・簡便性およびコストの面で数多くの問題点を残している。
 本研究では、セルロースアセテート膜を用いて簡便・迅速かつ高感度にアルブミンを目視判定できる新しい方法の開発を行った。操作手順は、まず、タンパク質溶液を含む試料溶液にpH 3.0 緩衝溶液を加え全量100 μlとする。この溶液に1 % ポリエチレングリコール (分子量 10000) を含むエリスロシン B 溶液を混合する.うち 5 μl をセルロースアセテート膜 にスポットし,形成される赤色ドットを目視してタンパク質濃度を判定する。本研究で見出された現象は下図に示した通りで、タンパク質−エリスロシンB会合体溶液を膜上にスポットすると、セルロースアセテートの特性である親水性と撥水生のバランスによって、液滴は一度半球状に保持され、その直後膜へ吸収される。結果として、タンパク質を含まない色素溶液は淡い赤色の均一な円として広がるのに対して、タンパク質を含む溶液では中央部に鮮明な赤色ドットが凝集し、この差異によってタンパク質濃度を判定できる。呈色は数分で完了し、ヒト血清アルブミンにおける目視検出限界は1 mg/L である。本法は、試験紙法や機器を用いる吸光光度法と比較して1桁以上高感度であり、また、従来のドットブロット法で必要とされる染色・脱色の煩雑な操作手順を克服して、タンパク質溶液を膜にスポットするだけの簡便かつ高感度な目視テスト法を与えている。