◆環境・防災◆  化学の‘ものさし’をつくる
         −ダイオキシン類及びPCB分析用の河川底質標準物質−
 機器を用いた分析法はそのほとんどが相対分析法であり、比較・校正のための‘ものさし’となる標準を必要とする。また分析値の信頼性(精確さ)を向上させるには分析試料と類似した「組成標準物質」が必要である。日本分析化学会が主催した開発委員会の下で、これまでも幾つかの標準物質を開発し、今回ダイオキシン類及びPCB同族体分析用の河川底質標準物質について検討した。乾燥・粉砕・ふるい分けなどに留意して作製した試料について共同分析を行い、低濃度用及び高濃度用の2種類について、ダイオキシン類及びPCB同族体それぞれの認証値の値付けに成功した。
【2E16】   ダイオキシン類及びPCB同族体分析用河川底質標準物質の製造

      (環境テクノス(株))○濱本亜希 鶴田 暁
       [連絡者:濱本亜希,電話:093-883-0150]

 近年の機器分析の発展に伴い、分析値を客観的に評価するための標準物質が従来にも増して求められている。分析値の管理には組成の類似した標準物質を用いることが最も重要である。これまで日本分析化学会は、ダイオキシン類分析用のフライアッシュや土壌標準物質などを開発してきたが、これらに引き続き、ダイオキシン類及びPCB同族体分析用(高濃度,低濃度)河川底質標準物質を開発した。開発にあたっては、委員会が設置され当社も参画した。
原料は、中部地方の河川で予備分析の結果PCB濃度に差のあった2地点から採取した。採取後すぐに重力脱水を行い、当社受領時の含水率は高濃度用が約40%,低濃度用が約30%であった。まず、低濃度用の原料を風乾台上に広げ、夾雑物を除いて順次細かくし、2mm程度になるまで篩い分けして風乾した。約1週間後、含水率が10%程度となったため、アルミナ製のボールミルで粉砕し,250μm及び106μm目の篩いを用いて電気振動式篩い分け機で篩い分けした。未通過分は粉砕・篩分けを繰り返し、最終的に106μm通過分を約90kgを採取した。採取した試料は、V型混合機で1時間混合し均質化した。一方、高濃度用試料についても同様の手順で106μm以下を約74kg捕集したが、混合については回転翼式攪拌機(容量100L)で1時間混合した。
 混合後、試料の均質性を評価するため、試料保管容器の5カ所からサンプリングして各々二分し、合計10個の試料を用意した。これについてMn・Zn・Cu・Ni及び含水率・強熱減量・粒度分布を分析し、標準偏差,変動係数を求め、分散分析を行った。
 その結果、均質性は良好であることがわかったため、開発委員会では、16の分析機関の協力による共同分析を行った。PCB同族体についてはそのうち8機関の協力で前処理法が検討された。その結果、最も信頼性の高い方法で求められた結果を採用し、統計解析を経て不確かさが求められ,低濃度用として,DXN-TEQ;54.3±2.9 pg/g-dry,PCB同族体 ;1003±87 ng/g-dryの認証値と,高濃度用としてDXN-TEQ:78.7±4.1 pg/g-dry,PCB同族体 ;1530±160 ng/g-dryの認証値がそれぞれ付与された。