◆生活文化・    バイオエタノールからガソリンの流通ルートを探る 
 エネルギー◆ 

バイオエタノールから合成したエチルターシャリブチルエーテル(ETBE)をガソリンに7%添加したバイオガソリンの試験販売が2007年度より1都3県で開始された。バイオガソリンは地球温暖化対策以外にも,法化学分野におけるガソリンの識別に有効である。本研究では,千葉県内に流通するバイオガソリンとレギュラーガソリンの組成分析を行い,ETBEがガソリンの流通経路を推定する指標として有効であることを確かめた。放火などの犯罪捜査においてガソリンの検査が必要であることから,入手ルートの絞り込みに大きく貢献することが期待される。 

【H1009】              バイオガソリンの分析

     (科警研)○吉田浩陽・鈴木真一
    [連絡者:鈴木真一,電話:04-7135-8001]

 2007年4月27日より,東京,神奈川,埼玉及び千葉の1都3県の50箇所の給油所(ガソリンスタンド)においてバイオガソリンの試験販売が開始された。バイオガソリンの販売は,2005年に閣議決定された「京都議定書目標達成計画」の中の「バイオマス由来の輸送用燃料導入への取り組み」に基づく。バイオガソリンとは,植物原料から得られたエタノール,すなわちバイオエタノールから合成したエチルターシャリブチルエーテル(ethyl t-butyl ether: ETBE)をレギュラーガソリンに7体積%添加したものである。
 バイオガソリンは温室効果ガス削減のために導入されたものであるが,法化学分野においても有用性があると考えられる。日本国内の火災原因の第一位は放火であり,放火には火勢を増す目的でガソリンなどの可燃性油類が使用されることが多い。したがって,放火事件の捜査においてガソリンの検査が必要となる場合があるが,現状ではガソリンの効果的な異同識別法は存在せず,販売給油所の絞込みは難しい。ETBEが検出されれば,現在日本国内に存在するおよそ44,000箇所の給油所のうちわずか50箇所に絞り込める可能性があり,ガソリンの流通経路を絞り込む指標としてのETBEの意義は大きい。
 そこで,本研究では,千葉県内の給油所から3種類のブランドのバイオガソリンとレギュラーガソリンを3ヶ月間隔で1年間にわたって収集して組成の分析を行い,ETBEがガソリンの流通経路を推定する指標となりうるか検討した。
 その結果,同一時期に販売されているバイオガソリンの組成は,給油所のブランドが異なってもほぼ同一であり,レギュラーガソリンへのETBEの混入も見られなかった。このことから,ガソリン中にETBEが検出された場合,そのガソリンは50箇所のバイオガソリン販売スタンドのいずれかで販売された可能性が極めて高いと見なせ,ETBEはガソリンの入手ルートの絞込みに有用であるといえる。なお,2008年度のバイオガソリンの販売は1都1府7県の100箇所の給油所に拡大されている。