◆生活文化・    安定同位体比でバイオエタノールの原材料を判別 
 エネルギー◆ 

 地球温暖化防止策のひとつとしてバイオエタノールを石油の代わりに使おうという動きがある。しかし,食料問題等ともからみ何をバイオエタノールの材料にするかをよく考える必要がある。エタノールは炭素,酸素,水素からなるが,それらの元素がどのような同位体組成からなるかを調べることによりその起源を推定できることが知られている。本研究では,エタノール中の炭素と酸素の同位体の比率を質量分析法によって測定することによりその材料を推定できることを示した。例えば,さとうきびから作られている醸造用アルコールと,米からできている純米酒を明確に識別できた。 

【B1003】    エタノールの炭素と酸素安定同位体比の測定による原料の分類

            (自動車研) ○秋山賢一,浅野幸子
         [連絡者:秋山賢一,電話:029-856-0804]

 クリーンな燃料としてエタノールが注目されており,連日新聞やテレビなどのマスコミをにぎわしている.燃料としてのエタノールは,いずれは枯渇すると考えられている石油の代わりとして使える可能性がある.さらに,日本のように石油の産出が難しいところでも,植物から作るエタノールは計画的に作ることが可能である.また,大気中の炭酸ガスを取り入れて育つ植物から作られるエタノールを燃やして排出される炭酸ガスは,大気中の炭酸ガスを増やすことにならないという考え方から,石油を燃やすよりは地球温暖化防止になると考えられている.このような状況から,いずれは,これらの植物由来のエタノールを,石油から作ったエタノールと識別する技術が必要になると考えられる.

 このような識別を可能にする技術として,安定同位体比の計測が上げられる.炭素の安定同位体比は植物の光合成の仕組みにより変化し,酸素は生育環境の指標となることは知られている.図1 には,晩酌に飲んでいる日本酒を集めて分析した結果を示す.図1 から,特級エタノールや醸造用アルコールはさとうきびから作られていることが推測され,混ぜ物がないとされている純米酒とは明確に識別が可能である.また,この結果から,普通酒は醸造用エタノールと米から造ったエタノールがブレンドされていることも推察できる.このように,安定同位体比の計測で,エタノールの起源が推測可能なことが分かった.