◆新素材・    リン担持酸化チタンの太陽光を有効利用する光触媒活性の発現
 先端技術◆
 現在の光触媒は太陽光の少量成分の紫外光しか利用されていなく効率が悪い。光触媒である酸化チタンに窒素や炭素をドープすることで,太陽光に多く含まれる可視光に応答すると報告されている。本研究では,報告例のないリンを担持した酸化チタンを合成し,その構造解析等を行った。構造解析により,触媒活性が高いアナターゼ構造であること及び表面分析によりリンが担持されていることがわかった。紫外光を照射したときの光触媒活性が優れていることも確認した。また,この触媒が灰色を呈しており,可視光の吸収も期待できる。

【Y1099】     軽元素を担持した新規光触媒酸化チタンの構造と光触媒活性の研究

   (福岡大理・福岡大高機能物質研1)○岩瀬元希・山田啓二1・藤尾侑輝・
    長濱俊・脇田久伸
   [連絡者:脇田久伸、電話092-871-6631]

 光触媒酸化チタンは、太陽光(紫外光)を吸収して、表面に吸着した有機化合物を分解することから、環境浄化の材料として認識されている。実際に、中部国際空港の窓ガラス表面に酸化チタンを塗ることで、窓ガラスの汚れが改善されたとの報道は話題となった。ただし、光触媒酸化チタン(アナターゼ)は紫外光のみに反応するので、太陽光に多く含まれる可視光が利用できれば、さらなる分解効率の向上が期待される。そのため、2001年以降、窒素や炭素をドープした酸化チタンが可視光に応答するとのレポートが報告された際には非常に注目された。ところが、同じ非金属元素であり、窒素と同族のリンを担持した酸化チタンの研究例は世界的に非常に少ないのが現状である。
 本研究では、分析化学的手法を用いて、リン担持の光触媒酸化チタンの構造を解析しながら、より光触媒活性の高い酸化チタンを合成した。合成は、ゾルゲル法(均一沈殿法)で用意した酸化チタン前駆体粉末(化合物A)と、チタンとリンが結合している化合物粉末(化合物B)を混ぜ合わせてから焼成する方法を用いた。
 合成した光触媒の構造解析から、光触媒反応を起こすとして知られるアナターゼ構造であることを確認した。表面分析から、リンが担持されていることも判明した。また、合成した光触媒は灰褐色を呈していた。これは可視光を吸収することを示している。さらに、紫外光を当てたときの有機物の分解速度の変化を調べた。市販されている酸化チタンと分解の速度を比較することで、合成した光触媒が優れた光触媒活性を持つことを見出した。分析化学的手法でリンを担持した酸化チタンの特性を調べることで、非金属元素担持の酸化チタンに関する知見を増やし、光触媒酸化チタンの効率向上へ貢献することが期待される。