◆新素材・      結晶相の分布を可視化する反射投影型X線顕微鏡の開発
 先端技術◆
 鉱物,生体や材料組織等では,不均一な結晶相を持った試料が多く,その組織構造に興味がもたれている。従来,このような試料における結晶相の分布を調べるためには,X線微小ビームに対して試料をXY走査しながらX線回折測定を行うしかなく,一試料の測定に膨大な時間が必要であった。開発された反射投影型X線顕微鏡では,試料全体にX線を照射し,回折されたX線をCCDで検出することにより,結晶相やひずみ・応力の分布を迅速に可視化することに成功した。試料を固定したままの計測が可能であり,環境を変化させながら連続的な結晶成長や結晶構造変化を観察することができる。

【A3006】      空間的に分布のある試料のX線回折イメージング技術の開発

        (物質・材料研究機構) 桜井健次・水沢まり
        
[連絡者:桜井健次,電話:029-859-2821]

 近年,低温における細胞保存技術が注目を集めている.細胞や臓器などの生体材料を保存する場合,保存後の品質低下が重大な影響を与えるため,機能を保ったままで長時間保存できる方法が必要となる.一方,北極や南極に生息するある種の魚類は,凍結温度域において組織の凍結から身を守るために,不凍タンパク質(antifreeze protein; AFP)と呼ばれる生体防御物質を持っている.AFPは氷結晶に結合し成長を抑制することで,モル凝固点降下に比べて300-500倍以上も強い凝固点降下を引き起こす(モル濃度換算).また,低温環境において細胞を保護することも知られているが,保護効果の作用機序はほとんど解明されていない.そこで,本研究では低温環境下の細胞を長時間観察可能な顕微鏡を開発し,AFPの細胞保護効果の評価に応用した.