◆生活文化・     元素組成からお茶の原産地偽装を見抜く
 エネルギー◆ 

 近年,様々な食品偽装が社会問題となっているが,JAS法ではすべての生鮮食品に対して原産地表示が義務付けされ,現在では加工食品についても拡大されている。食品の品質や安全性の確保のために,お茶をはじめ様々な農産物の科学的な原産地判別法が求められている。農作物は,栽培された土壌の違いがその元素組成に大きく反映される。本研究では,中国産と国内産の213点の緑茶葉について,誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて元素分析を行い,約30種類の元素含有量を調べ,多変量解析を行ったところ,本法が緑茶葉の原産地の判別に有効であることが確認された。

【P2014】 緑茶葉の産地判別法の開発

(キリンホールディングス1・野菜茶業研究所2)○服部良太1, 宮田順子1, 長谷川香1, 伊藤勇二1,
氏原ともみ2, 林 宣之2, 木幡勝則2, 坂元雄二1
[連絡先:服部良太, 電話:027-346-9539]

 近年、食品の原産地表示偽装に関連する事件が、テレビや新聞で連日報道されている。それに伴い、消費者の食品に対する不信感は、食品の品質および安全性に対する関心と共に高まっている。またJAS法においては、2000年7月より全ての生鮮食品に対して原産地表示が義務付けされ、現在では加工食品等についても原料原産地表示の義務付け範囲は拡大されている。この様な背景の中、様々な農産物について科学的・客観的に原産地を判別するための研究は現在数多く進められている。
 今回、科学的・客観的な産地判別法として、元素組成を用いた緑茶葉の原産地判別に注目した。農作物においては、栽培された土壌の違いがその元素組成に大きく反映されることが知られている。したがって、対象となる各原産地内で栽培された緑茶葉の元素組成データを蓄積し、目的の地域に著しく多く或いは少なく存在する元素を利用し解析を行うことにより、緑茶葉の原産地判別法の確立が期待できると考えた。
 本研究では原産地既知の緑茶葉サンプル213点(中国産:38点、国内産:175点)について、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)を用いた元素分析を行い、緑茶葉に含まれる約30種類の元素含有量を調査した。そのデータについて多変量解析を行った結果、緑茶葉の原産地(中国産、国内産)を判別することが可能であることを確認することができた。