◆生活文化・     食品や飲料中のかび臭成分を迅速かつ高感度に分析
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 かび臭の一つとして知られる2,4,6-トリクロロアニソール(TCA)は,さまざまな工程からの汚染が考えられ,汚染経路の特定が困難な化合物として知られている。一般に良く知られているのが,ワインボトルのコルク栓のかび臭である。TCAのにおいは極めて感じやすく,飲料や食品中ではpptレベルと言われている。そこで,簡易加熱脱着が可能で,においの成分を濃縮できる特別な注射器を用いて試料をGC/MSに導入した。GCで各成分を分離し,その成分のにおいを嗅ぎながら,MSでそれら成分を同定した。この方法によりコーヒーや茶飲料中のTCAのpptレベルの測定を手軽に行えるようにした。

【?o2040】 簡易加熱脱着-GC/MSシステムを用いた飲料中のかび臭分析

  (サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)〇羽田三奈子・山岸陽子・金井みち子
    [連絡者:羽田三奈子, 電話:06-6863-1550]

 食品、および飲料中の不快なにおい(オフフレーバー)には、様々な原因が考えられますが、その中で2,4,6-トリクロロアニソール(TCA)は「かび臭」のひとつとして知られています。TCA臭が食品に付着する原因として、木材の防かび剤として使用されている2,4,6-トリクロロフェノール(TCP)が、ある種のカビと反応しTCAが生成することがわかっています。また、様々な工程が汚染原因と予想されるため、汚染経路の特定も困難な化合物です。今までにTCA被害が報告されている食品はコーヒーやココア、ドライフルーツや加工食品など数多いですが、一般によく知られているものではワインボトル栓のコルクのかび臭があります。
TCAの閾(いき)値(= 嗅覚感度)は極めて低いとされており、においを感じやすい飲料や食品中ではpptレベル(1兆分の1)とも言われています。この濃度レベルの化合物を高感度分析するのは大変困難で、通常は溶剤抽出や水蒸気蒸留法など煩雑な前処理が必要になります。そこでこのたび、「手間をかけず」に高感度分析を行うために、簡易加熱脱着法であるITEX(Inner Tube Micro-extraction)法を用いて飲料の匂におい部分(ヘッドスペース)の分析を行いました。分析装置は、様々な食品や飲料の匂いを調べるために欠かすことのできないガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)に、ITEX付オートサンプラと匂い嗅ぎ(スニッフィング)システムを搭載したものを使用しました。

ITEX-GC/MS-スニッフィングシステムでは、匂い成分を濃縮できる「特別な注射器」を用いてTCAやその他の成分を濃縮しGC/MSに導入します。それを更に、ガスクロマトグラフィの技術を用いて複数の成分を分離し、各々の成分をスニッフィングシステムで匂いを嗅ぎながら、質量分析計で同定します。この分析システムにより、市販のコーヒーや茶飲料において、TCAのpptレベルの測定が手軽にできるようになりました。