◆環境・防災◆     現場で容易に測定できるリン酸態リンの分析手法を開発
 湖沼水や河川水へのリン酸態リン(リン)の流入は,アオコや赤潮などの水質悪化をもたらす。従って,リン濃度の測定は環境保全の観点から極めて重要である。これまでの分析では試料水を実験室に持ち帰ってリンを測定していたが,発色させた試料水をカラムに通水することにより,試料の採取現場で測定できる方法を開発した。この方法は,通水後カラムに捕集されたリンを展開させて,その発色帯の長さからリン濃度を定量するもので,微量成分分析が要求される環境水から,高濃度のリンを含む工場排水まで広範囲の試料水に適応できる簡易分析法として期待される。

【P3064】   環境水中リン酸態リンの現場固相捕集に基づく目視簡易分析法の開発

         (島大院総理1・島大総理2)○大石有希子1・清家泰2・奥村稔2
            
[連絡者:奥村稔,電話:0852-32-6411]

 環境水中のリン酸態リンは、植物プランクトンにとって必要な栄養塩の一つである。また、排水(人為起源)から多量のリン酸態リンが湖沼水や河川水等の環境水に流入すると、富栄養化現象の原因となり、植物プランクトンの増殖によるアオコや赤潮を引き起こし、環境水水質の悪化を招く。このため、リン酸態リンの濃度測定は、環境水の現況を把握するのに重要である。環境水中のリン酸態リンの分析では、試料水を実験室に持ち帰って定量する方法が一般的であるが、現場で迅速・簡便に分析ができれば、水質の異常時にたちどころに対処できる。このため、現場でできる水質診断の観点から、環境水の現場で迅速・簡便にできる簡易分析法が求められている。
 本研究では、発色した試料水をカラム管に通し、その管中にできる発色帯の長さから濃度を求めるリン酸態リンの簡易分析法を開発した。本法は現場で利用でき、さらに、そのカラム管を実験室に持ち帰り、精度のよい固相抽出/吸光光度定量法としても活用できる。分析操作では、まず、疎水性充填剤を充填したカラム管に発色させた試料水(青色)を通水し、カラム管上部に青色発色帯を捕集する。次に展開剤を通水し、発色帯を展開する。そして展開した発色帯の長さを測定する。展開した青色発色帯の長さとリン酸態リンの絶対量との間にはよい相関があるため、発色帯の長さからリン酸態リンの濃度を測定することができる。また、試料水の液量を5〜50 mlの間で変化させても、同じ相関がみられる。このことから、試料液量50 mlを用いたとき、リン酸態リンがほとんどない環境水中のリン濃度(数μgP/lオーダー)でも測定が可能となり、液量5 mlを用いればリン酸態リン濃度の高い工業排水でも測定できる。さらに、展開した青色発色帯はアスコルビン酸溶液で簡単に溶離できるために、吸光光度法により精度よくリン酸態リン濃度を測定できる。

 本法は非常に広い濃度範囲に適用でき、簡易で迅速に測定できるリン酸態リンの現場分析法として有効である。また、より精度のよい固相抽出/吸光光度定量法として併用し、濃度の確認をすることもできる。