◆環境・防災◆     国際協力によるドナウ川の水質のモニター
 ドナウ川はドイツ,オーストリア,ルーマニア,ハンガリーなどヨーロッパ10か国を通って流れているため,その環境保全には国際協力が必要である。また,それらの国の中にはルーマニアのように発展途上のため分析設備や体制が整っていない国もある。発表者らは国際協力の一環として徳島県から派遣されてルーマニアに赴き,ドナウ川の水質モニタリングに関する支援を行ってきた。汚染の指標となるBOD(生物学的酸素要求量)や全窒素濃度,全リン濃度などを継続的に測定した。その結果,ドナウ川中流域が特に汚染が進んでいることがわかった。

【H1006】       ド ナ ウ 川 の 水 質

      (徳島県、徳島大工)○大垣光治・吉積幸二・本仲純子・藪谷智規
      [連絡者:大垣光治,電話:088-625-7751]

 ドナウ川は、ドイツのシュバルツバルトを源流として最終的に黒海に流入しているヨーロッパで第2位の長さをもつ河川である。ドイツ、オーストリア、ルーマニアなど10か国を貫通する国際河川であり、1990年代から国境を越えた国際環境保全についての取り組みが行われている。1996年からは、ドナウ川流域の国際モニタリングネットワーク(TNMN)が動き出した。各国は毎月水質調査を行い、調査結果をドナウ川保全国際委員会(ICPDR)へ報告しているが、そのデータはTNMN Yearbook として公表されている。

 国際モニタリングネットワーク(TNMN)に参加している国の経済状況や環境問題への取り組みは国によって異なる。例えば、ルーマニアの1人当たりのGDPは3,347米ドル(2004年)で、EU加盟中で最も低く日本の1/10程度である。著者は2002年3月から2004年3月までの2年間、徳島県から派遣されて、ルーマニアにおいて環境分析のJICA長期専門家として活動したが、環境モニタリングの分野においても、必要な機器整備、分析技術ともに十分とはいえない状況であった。そこで、ドナウ川の水質調査では、参加各国に同じ測定方法を使うことを義務付けていない。その代わり、各項目ごとに決められた報告下限値や測定誤差を満足すれば、どんな手法で分析しても良いことになっている

 国際環境モニタリング(TNMN)では、測定結果を評価するために、特別に定めた環境基準を使っている。同一地点で得られた年間11回以上の測定値の90%値で評価しており、目標としている水質はBOD 5 mg/l、T-N 4 mg/l、T-P0.2 mg/lである。日本の公共用水域におけるBODの評価は75%値で行われており同一には評価できないが、河川B類型(BOD 3 mg/l)と同じ程度の水質であろうと考えられる。2003年におけるBOD値は、ドナウ川本流の調査地点のうち17%が目標水質を超えており、目標水質を超えている地点は、ハンガリー及びその下流のドナウ川中流域に集中していた。