◆新素材・      濃度をモノサシで測る簡易微量分析法
 先端技術◆

 発色化合物の量が時間と共にねずみ算式に変化する「自己触媒反応」を用いて,微量の物質をモノサシを用いて測定できる全く新しい分析法を開発した。自己触媒反応では,見かけ上ある一定時間後に急激に溶液の色調の変化が起こる。この色調変化が起こるまでの時間は触媒の濃度に比例するため,この反応を細管の流れの中で行わせれば,発色域の長さから溶液中の触媒濃度を測定することができる。この方法をホースラディッシュペルオキシダーゼの分析に応用したところ,0.05 1ppmの定量が可能であった。本法は,検出器の要らない分析法として今後の展開が期待される。

【?o2027】     目とモノサシで濃度を測る〜100万倍安価な検出器のできるまで〜

(茨城大工)○加藤 潤・五十嵐淑郎
[連絡者:五十嵐淑郎,電話0294-38-5059]

 自己触媒反応は触媒がねずみ算式に生産される驚異的な化学反応です。この反応は,反応開始からある任意の時間(誘導時間)の後,突然溶液の色が変わるのが特徴です。この溶液にトリガー(反応の引き金となる物質:酵素,金属イオンなど)を添加すると,その濃度によって誘導時間が変化します。自己触媒反応を利用した分析法はこの誘導時間を目とストップウォッチで測定することにより,微量のトリガーを定量します。本研究室では今回,時間によるトリガー濃度の定量が可能であればそれを距離に変換することも可能ではないかという着想のもと,世界で初めて自己触媒反応をマイクロフロー分析用デバイスへと応用しました。この長さ測定−マイクロフロー分析用デバイスを用いて,ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)の安価,簡易,安全かつ省試薬ができる定量法を開発しました。定量範囲は0.05 ~ 1 ppmです。HRPは臨床診断や食品,環境,薬物検査で恒常的に行われているイムノアッセイ法の抗体ラベルとしてよく知られています。したがって,その定量ができれば腫瘍マーカー,食品添加物,農薬,薬物,環境汚染物質など1000種類以上の抗原を間接的に定量することができます。本デバイスは分析用途が広い,画期的な計測手段です。