◆生活文化・     ペットボトルのお茶でアルツハイマーを予防する
 エネルギー◆ 

 ペットボトル茶飲料は消費量を急速に伸ばし,これまで茶摂取量の少なかった若年層にまで消費が拡大している。これまでペットボトル茶飲料の製造工程で生成されるカテキン類の熱異性化体の機能については知られていなかった。本研究では,カテキン類とその熱異性化体の機能性評価としてアルツハイマー病の予防・進行抑制効果について着目した。その結果、アセチルコリンエステラーゼやβ-セクレターゼの活性阻害作用,アミロイドタンパクの凝集抑制作用を有することが認められアルツハイマー病をはじめとする脳疾患の予防効果を有する可能性が示唆され、機能性食品として期待される。

F2006】 ペットボトル茶飲料中カテキン類の定量とアルツハイマー病の予防効果に関する基礎的検討

(共立薬大)○村上勲,小西茉美,渡邉まどか,永田佳子,森田裕子,金澤秀子
[連絡者:金澤秀子,電話:03-5400-2657]

 茶葉に含まれているポリフェノールの一種であるカテキン類は,抗酸化作用,発がん抑制作用,突然変異抑制作用,血圧上昇抑制作用,血中コレステロール低下作用などの多様な生理作用を有しており,お茶は生活習慣病を予防する最も身近な機能性食品として注目を集めている。またペットボトルの普及により茶飲料は消費量を急速に伸ばし,これまで茶摂取量の少なかった若年層にまで消費が拡大している。しかし,ペットボトル茶飲料中には,本来茶葉中に含まれているカテキン類以外にも,製造工程の熱殺菌過程にて生成される熱異性化体が含まれていることが知られており,それら熱異性化体の機能性評価に関する情報は少ないのが現状である。そこで本研究では,カテキン類とその熱異性化体の機能性評価を目的とし,アルツハイマー病の予防・進行抑制効果について着目し,検討を行った。
アルツハイマー病患者の大脳皮質や海馬では,記憶や学習に重要な神経伝達物質の一つとして働いているアセチルコリンが著しく減少しており,アセチルコリン代謝酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の活性を阻害することで,初期アルツハイマー病の進行を抑えられる事が知られている。またアルツハイマー病の発症は,脳内においてアミロイド前駆体タンパクからβ−セクレターゼによって生成されたアミロイドβペプチド(Aβの凝集・沈着が引金であると考えられている。
 昨年のアメリカ化学会Chemical & Engineering Newsで,緑茶抽出液はAChEやβ−セクレターゼの活性阻害作用を有し,その作用はコーヒーでは認めらないことより,カフェイン以外の成分による作用であるとの報告が紹介された。我々は,この成分がカテキン類ではないかと考えて検討を行った結果,茶葉由来のカテキン類とその熱異性化体は,AChE,及び,β−セクレターゼの活性阻害作用,Aβ凝集抑制作用を有することが認められた。脳に作用させる薬剤は脳内への移行性が問題となるが,カテキン類は脳内へ移行する事が知られている。このようなカテキン類を多く含み,若年層から高齢者までの広い年齢層が日常的に摂取できる茶飲料は,生活習慣病を予防するだけではなく,アルツハイマー病をはじめとする脳疾患の予防効果を有する可能性をもつ機能性食品として期待され,また熱異性体を含むカテキン類は,アルツハイマー病などの脳疾患治療薬の有用なリード化合物となりうることが示唆された。