◆医療・生命◆ 迅速・簡便なアレルギー診断ができる新規センサーの開発

近年、花粉症や食物アレルギーなどのアレルギー疾患が増加している。アレルギー反応は、粘膜中肥満細胞に結合した免疫グロブリン E(IgE)抗体がアレルゲンと結合し、肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されることによりおこる。IgE 及びヒスタミン濃度を現場で迅速、簡便に測定することを原理としたアレルギー診断法を開発した。表面プラズモン共鳴法を利用して免疫反応により検出した。本センサーによる IgE、ヒスタミンの検出限界は、ヒトの正常値以下であり時間的にも約 30 分と従来法よりも大幅な時間短縮が可能であった。

P3070】  表面プラズモン共鳴現象を用いるアレルギー診断のためのイムノセンサーの開発

        (九大院工)○李 岩・任 聚杰・中嶋 秀・宗 伸明・中野幸二・今任稔彦
         [連絡者:今任稔彦,電話:092-802-2889]

 近年,花粉症をはじめ,食物アレルギー,アトピー性皮膚炎,気管支喘息などのアレルギー疾患が増加し,社会問題化している。アレルギーは,粘膜のマスト細胞に結合したIgE抗体がアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を捉えると,マスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されることにより発症するといわれている。IgE抗体を多くもつ人ほどアレルギーを発症しやすく,また発症により血液中のヒスタミン濃度が増加することから,血液中のIgE抗体とヒスタミンの濃度を測定することにより,アレルギー診断ができると考えられる。しかし,IgE抗体とヒスタミンの測定に汎用される酵素免疫測定法は,煩雑な操作が必要で測定に数時間を要する。
 我々は,現場で迅速かつ簡便にリアルタイム測定が可能な,アレルギー診断のための表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用した新規免疫センサーを開発した。本センサーにおけるIgE抗体とヒスタミンの検出限界はそれぞれ130 ppbおよび3 ppbであった。これらの値はいずれもヒトの正常値を下回ることから要な時間も約30分と,大幅に短縮できた。本センサーはフロー法を用いているので測定の自動化も容易である。また,アレルゲン検査にも適用可能であると考えられ,今後,臨床検査や食品分析の分野での実用化が期待される。