◆生活文化・     女性の強い味方,大豆イソフラボン 12 成分を迅速に定量する
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 大豆イソフラボンは、女性疾患の予防効果が期待されており、健康食品としての需要が拡大している。大豆には 12 種類のイソフラボンが含まれており、各成分の構成比や含有量は大豆の品種や加工方法により大きく異なり、また生体内での機能にも大きな差異がある。このため一つの試料について大豆イソフラボン 12 成分を定量することが必須であり、かつ食品分析の現場では正確・迅速・簡便な分析法が求められる。本研究では従来の分析方法の改良を行うことで、12 成分を 10 分以内に良好に分離することが可能となり、分析時間を約 1/6 に短縮できた。

P3016】     逆相HPLCによる大豆イソフラボン12成分の一斉迅速分析法の開発と
          食品分析への応用

           (ワイエムシィ)○森山雅子・小路庸子・栗山尚浩
              
[連絡者:森山雅子,電話:0761-47-8003]

 大豆および豆腐や味噌などの大豆加工食品に多く含まれる大豆イソフラボンは、構造が女性ホルモンのエストロゲンに似ていることから体内で女性ホルモンと同様に作用して、更年期障害や骨粗鬆症、乳がんなど女性疾患の予防効果をもたらすことが期待されており、近年、大豆イソフラボンを添加した健康食品の需要が拡大している。しかし一方で、過剰な摂取により乳がん発症のリスクが高まるとの報告もあり、平成18年5月には食品安全委員会により大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値および特定健康食品としての安全な一日上乗せ摂取目安量の上限値が設定されるなど、さらに注目が集まっている。大豆には12種類のイソフラボンが含まれているが、各成分の構成比や含有量は大豆の品種や加工方法により大きく異なっており、また、イソフラボンの種類によって生体内での女性ホルモン様作用の強さが異なるため、これらを正確に評価するためには、各試料について大豆イソフラボン成分各々の定性および定量分析を行う必要がある。
 現在、このような大豆イソフラボンの分析には、逆相系カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が一般的に用いられている。しかし、食品メーカーなどで広く採用されている従来のHPLC条件は、1回の分析時間が長く、また試料溶液中で経時的に一部のイソフラボンの分解が起こりやすいなど、分析効率および試料安定性の面で若干問題があった。
 本研究では、HPLCによる大豆イソフラボンの一斉分析方法の改良を行うとともに、大豆試料からの抽出条件や溶液中での安定性についても検討した。イソフラボンのような高極性化合物の分離選択性に優れたカラムを用い、カラム長を短く、また溶出条件を最適化することにより、12成分を10分以内に良好に分離することが可能となり、分析時間を従来法の約1/6にまで短縮できた。また、大豆からのイソフラボン抽出検討では、抽出溶液、温度、時間等により、総量や含量比、抽出中や保管中の安定性に差が見られ、50%エタノール溶液中で室温下1時間撹拌抽出後、4度で保管することにより、効率的かつ安定に分析可能であることがわかった。本法は、各種大豆加工品や健康食品中の大豆イソフラボン分析に適用可能であった。今後さらに、大豆イソフラボンの食品中含有量やヒト摂取量の把握、生体作用の研究などが重要視されると考えられるが、本法の応用により分析作業が効率化されることが期待できる。