◆環境・防災◆  廃材を使って有害重金属を取り除く
 重金属(カドミウムや鉛など)は生体に対し高い毒性を示すことから,これらの廃水からの除去は極めて重要である。これまで行われている重金属の除去法は手間とコストの点で問題があり,より簡便で安価な方法の開発が望まれていた。そこで,重金属の吸着材として,これまで廃材として処分されてきたウッドチップに着目した。カドミウムと鉛の吸着実験から,ウッドチップに粉末のセメントを混合しフィルター状に成型することで高い吸着能が発現することがわかった。このフィルターは安価で様々な形状に成型できるため,廃水処理分野で広く実用されるものと期待される。

P2037】        ウッドチップを使ったCd及びPbの吸着材の開発

(群馬大工)○原 尚子、森 勝伸、板橋英之
[連絡者:板橋英之、電話:0277-30-1272]

 水俣病やイタイイタイ病の事例からもわかるように、重金属は人体に対し高い毒性を示すことが知られている。一旦環境に放出された重金属は、有機化合物と異なり分解されないため、長期間に渡って環境に留まることになる。また、たとえ微量であっても、繰り返し摂取した場合、人体に悪影響を及ぼす場合がある。従って、環境の保全には、重金属を排出しないことが極めて重要となる。
 一般に、現在行なわれている重金属の除去法は、凝集沈殿法と吸着法に大別されるが、処理コストと手間が問題となっており、より簡便で安価な重金属の除去法の開発は、廃水処理の分野では極めてニーズの高いテーマになっている。
 そこで、我々は、重金属の吸着媒体として、これまで廃材として処分されてきた木材の外側(甲羅)の部分に着目した。木質の主成分リグニンには、フェノール性水酸基のような、重金属の錯形成サイトが多数含まれているため、木材をチップ化して表面積を増大させたもの(ウッドチップ)は、重金属の吸着材になり得る。 しかしながら、ウッドチップ単独では、吸着能力が低く、実用的な吸着材とはならない。そこで、ウッドチップの吸着能力を高める手段として、粉末のセメントと混合する方法を考案した。セメントを混合することにより、ウッドチップ表面がアルカリ性雰囲気となり、リグニンがマイナスの電荷を帯びるため、陽イオンである重金属はウッドチップにより多く吸着することになる。ここでは、ウッドチップにセメント系の硬化剤を混合し、フィルター状に成型固化したものを開発した。直径5cm、厚さ2cmのフィルターを用いて、CdとPbの吸着実験を行なったところ、その吸着能力はウッドチップ単独の場合の1000倍以上になり、排水基準値レベルのCdとPbを含む水の場合、このフィルター1個で数千リットルを処理できることがわかった。
 本研究で開発した吸着材は、安く簡単に作ることができ、また、様々な大きさ・形状に成型できるため、大規模な工場から小規模の工場に至るまで広い範囲の廃水処理に活用できるものと期待される。