◆新素材・ 分子の化学種をナノレベルで特定できる顕微鏡 |
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ナノテクノロジーの発展に伴い,ナノスケールでの画像観察が可能な走査型トンネル顕微鏡(STM)は重要な役割を果たすようになったが,今までのSTMでは表面化学種が何であるかを調べることは困難であった。本研究では,探針の先端を化学修飾することにより特定の化学種を選択的に観察できる,分子間トンネル効果を利用した顕微鏡を開発した。本手法は,更に探針分子と試料分子間の単一分子間電子移動の検出・評価に適用できるため,単一または非常に少数の分子を電子回路として用いる分子エレクトロニクスにおいても新たな展開がもたらされるものと期待される。 |
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【H1028】 分子探針と分子間トンネル効果顕微鏡 (東大院理)○西野智昭・梅澤喜夫 |
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近年,いわゆるナノテクノロジーに多大な興味が持たれており,様々な機能性ナノ構造体が創製されている.走査型トンネル顕微鏡(STM)は,原子レベルでの表面局所分析が可能であり,ナノ構造体の評価に広く用いられている.しかし,これまでSTMでは,表面化学種の同定は一般に困難であるという欠点があった.我々は,分子探針を用いることによって,化学選択性が得られることを見いだした.すなわち,従来の金属探針を,有機分子などを用いて化学的に修飾し,これらの吸着分子を探針として用いる.分子探針と試料中の特定の化学種・官能基とが水素結合や配位結合などの波動関数の重なりをもたらす相互作用を形成すると,トンネル電流は,その相互作用に伴う波動関数の重なりを通じて大きく促進され,これらの化学種・官能基が選択的に観察できる.さらに,本手法は,探針分子と試料分子間の単一分子間電子移動を測定できる.このような単一分子間電子移動は,従来法では検出が困難だった. |
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