◆新素材・ モバイル検査機器の可能性を秘める光ディスク技術のバイオ分析への活用
 先端技術◆ 

 DNAやタンパク質などのバイオ分析を普及するためには安価な機器の開発が必要である。民生用の光ディスクで使用されている光ピックアップを光源とし,金属遮光膜を付加して検出感度を上げたバイオチップ基板を使用したシステムを制作した。この装置を用いて蛍光色素と結合したDNAの検出感度を測定し,バイオ分析に使用できることを確認した。この方法が確立できれば在宅診断,途上国での感染症検査,個人認証や一般家庭での食品検査など,医療・食品・環境分野で技術的な革命をもたらすものと期待される。

A1028】      光ディスク用ピックアップを用いたマイクロチャネル上の蛍光検出

(シャープデバイス研)○宮島欣幸・藤 寛・鍵沢 篤
[連絡者:藤 寛,電話0743-65-0597]

 DNAやたんぱく質などのバイオ分析は、患者個人毎の治療や、病気に応じた最適な創薬など、高度医療に応用されようとしている。分析用のプローブとしては、生体環境に影響の少ないレーザ光などの光源が広く使用されている。しかし、現状では装置が高価であるため、研究機関、検査機関や大病院などの特定の機関でしか検査できない状況にある。
 一方、レーザ光源自体は、広く民生用の機器の中に普及している。特に、コンパクトディスク(CD)やディジタルビデオディスク(DVD)などの光ディスク装置には、半導体レーザを使用した安価で高品質な光ピックアップという光源が備わっている。
 そこで、我々は、これまで蓄積した光ディスク技術を有効に活用して、光ディスクとバイオ分析の融合技術を目指し、まずは手始めとして光ピックアップを光源に用いたバイオチップ(マイクロチャネル)上の蛍光検出を試みた。検出感度を上げるためにバイオチップ基板に金属遮光膜を付加し、蛍光色素と結合したDNAの検出感度を測定したところ、光ピックアップがバイオ分析に使用可能であることを見出した。今後、ディスク形状のバイオチップを作製すれば、現行の光ディスクシステムと同じ外観のバイオ分析装置が実現できるかもしれない。そうすれば、光ディスクで培った高品質・量産性を備えた普及型のバイオ分析装置の実現が可能になる。

 将来、最先端のバイオサイエンスと民生技術との融合が進展すれば、これまで特定の機関でしか検査できなかったDNAやたんぱく質の分析が、一挙に身近なものとなり、モバイルな検査機器も夢ではなくなる。たとえば、光ディスクや携帯電話などの民生技術を生かした在宅診断、途上国での感染症検査、個人認証や一般家庭での食品検査など、医療・食品・環境分野で技術的な革命をもたらすものと期待される。