◆医療・生命◆ レーザー光を用いた新しい血球分離法の開発
 レーザー光泳動法を血球分離に適用した。本法は微粒子にレーザー光を照射するとその性質により散乱力が異なることを利用して泳動させる方法で,特に光を吸収する物質ではその泳動速度が増大する。そこで赤血球のみに大きな吸収を示す緑色レーザーを用いて泳動速度を測定したところ,赤血球は白血球の11倍速く移動し,血小板はほとんど泳動しないことがわかった。又,血球試料を流路に流しこれに垂直にレーザー光を照射すると赤血球だけ分離することができた。これにより赤血球の連続分離も可能で,さらに同じ種類の血球でも形状や色が異なれば分離可能である。

A1010】       血球細胞のレーザー光泳動分離法の検討

(阪大院理)○棚橋優子・文珠四郎英昭・渡會 仁
[連絡先:渡會 仁, 電話:06-6850-5411]

 血液中には、赤血球、白血球、血小板などのマイクロメートルサイズの血球細胞が存在し、私たちの体を維持するためのさまざまな機能をつかさどっている。これらの血球細胞を分離分析する方法として遠心分離法が広く用いられているが、特殊な分離用試薬やバッチ操作が必要である。レーザー光泳動法は液中の微粒子にレーザー光を照射し、微粒子を非接触で泳動させる方法であり、とくに照射レーザーを吸収する微粒子の泳動速度が大きく、微粒子の吸収の有無による分別、分離が可能であると期待できる。
 本研究では、レーザー光泳動法を用いた新しい血球細胞の分離法について検討した。血球細胞のうち、赤血球のみが大きな吸収を示す緑色レーザー( Nd:YAG Laser, 532 nm)を用いて白血球と赤血球について光泳動速度を観測したところ、赤血球の泳動速度は、白血球の約11倍とかなり大きいことがわかった。また、血小板についてはほとんど泳動挙動が観測されなかった。これらの光泳動特性を利用して血球細胞の分離を行うため、図に示すようにフロー系で、フローに対し垂直にレーザーを照射して光泳動挙動を観測した。赤血球と白血球の混合試料では、赤血球のみをフローに対して泳動させることができた。この原理を用いることにより、血液中の血球細胞の連続的な分離ができる可能性があると考えられる。さらに、同種の血球細胞間においても、その泳動特性が異なれば細胞間分離が可能になると考えられる。