◆環境・防災◆  有害ヒ素化合物の新たな規制に対応できる分析法の開発
 半導体の製造には多くの有害物質が使われている。特にアルシン(AsH3)は毒性が強いため許容濃度(50ppb)が設定されているが,最近,この値が5ppbに引き下げられる見通しとなった。現在市販されているガス検知器では5ppbの測定は困難である。そこで,発色剤を塗布したテープを使ってAsH3を高感度に定量する方法を開発した。保湿剤にグリセリンを光源に青色LEDを用いることで,5ppbのAsH3を精度よく検出することができた。本法は各種の有機溶剤や水素などは全く妨害しないため,今後の規制に対応する半導体工場等の環境管理分析法として有用である。

P1035】      過塩素酸銀を用いる低濃度AsH3の光電定量テープの開発

(理研計器・工学大1) ○中野信夫・阿部佐都美・川辺哲也・長島珍男1 
[連絡者:中野信夫,電話:03-3966-1123]

 半導体を製造する各工程では、多くの有害物質が使用されている。アルシン(AsH3)は特に毒性が強く、その許容濃度は50ppb(ACGIH:米国)に規定されているが、昨今その値が見直されて5ppbへの変更予告が出されている。現状、5ppbのAsH3を精度よく検出できるガス検知器は市販されていないため、本研究ではこれまでに開発した試験紙(テープ)光電光度法に着目し、そこで用いられている定量テープ及び光源(LED)の最適化を行ない、感度の増加を検討した。
 定量テープについては、過塩素酸銀を用いた基本的な発色原理は変えずに、発色液の最適化を実施した結果、保湿剤の種類を変えても感度の増加は得られなかった。保湿剤としては従来のグリセリンが良好であった。また、光源(LED)については、従来使用している緑色LEDと新しく青色LEDに対するそれぞれのAsH3感度を比較した。その結果、青色LEDを用いると、緑色LEDの場合と比べて感度は約1.5倍を示した。
 以上の検討結果から、最適な定量テープ及び青色LEDを搭載した機器(図1に検知部の概略を示す)を用いて、適正なガス導入時間を3分として、AsH3 0〜15ppbの検量線を作成した。性能試験として、温湿度、流量、干渉特性、ベースラインの安定性について調査した。本定量テープはAsH3以外のハイドライド系のガス及びH2Sには応答するが、各種有機溶剤や水素等にはまったく応答しなかった。本器を実験室内で連続運転した結果、以前と比べると、S/N比は約2倍に向上し、ゼロドリフト0.5ppb以下で安定していた。以上から本条件を用いれば5ppbのAsH3を精度よく検出できることが分かった。