◆医療・生命◆ 唾液を用いたストレスの迅速評価法
 私たちの生活はストレスの要因であふれている。これらのストレス関連物質を測定し客観的なストレス評価を提案した。従来このような測定には大型の装置と熟練した技術を必要とし,結果が出るまでに多くの時間を要していた。筆者らは化学操作を基板上に集積化するLab-on-a-chip技術によりストレス物質の迅速・高感度計測法を考案した。具体的にはストレスによって唾液中に放出される3種のカテコールアミンをマーカーとして選び,精製法,濃縮法,高感度計測のための蛍光誘導体化を行えるマイクロチップの開発試みている。

【H1034】  Lab-on-a-chip(21)蛍光誘導化法を用いる唾液中カテコールアミン類分析
       チップの開発

(都立大院理)○小松剛司・伊永隆史
[連絡者:伊永隆史,電話:0426-77-2532]

 環境やライフサイクルの変化、仕事・家庭の問題や複雑な人間関係など、私たちの生活はストレスの要因であふれています。ストレスは「外からの身体的、精神的、社会的な刺激(ストレッサー)に対する生体反応」と定義されています。この生体内の反応にはコルチゾールやカテコールアミンなどのホルモンの放出があり、これによって体のバランスが保たれます。これらのストレス関連物質を測定することによって、ストレスを客観的に評価することができます。しかし、現在の分析装置は大型で、熟練した技術を必要とし、診断結果が出るまでに時間がかかります。そこで、Lab-on-a-chipと呼ばれる化学操作を基板上に集積化する技術を用いて、数センチ角のマイクロチップを開発することにより、誰でも簡単に短時間でストレスなどの診断が行えるものと考えます。ストレス関連物質は血液や尿、汗、唾液などに含まれています。この中で、唾液は精神的ストレスをかけずに、簡単に採取できることからストレスを評価するサンプルに有用です。

われわれの研究では、代表的なストレス関連物質であるドーパミン(DA)、エピネフリン(EN)、ノルエピネフリン(NE)からなるカテコールアミン3種をストレスマーカーとして選びました。唾液中には、カテコールアミンは超微量にしか存在せず、多くの夾雑物(タンパク質、無機塩類、ホルモン、微生物など)が含まれるため、分析操作が煩雑になりがちです。そこで、本研究では、唾液サンプルの精製や濃縮、高感度に検出するための蛍光誘導化などが行えるマイクロチップの開発を目指しています。現在の問題点としては、マイクロチップの作製にコストや時間がかかること、送液ポンプや検出器が大型であること、チップと配管の接続部などが上げられます。今後の展望としては、これらの課題を克服することにより図のようにコンビニエンスストアなどで日常的に個人が簡単にストレスなどの診断が行える時代が訪れるかもしれません。