◆環境・防災◆  天然の化合物を使って合板からのホルムアルデヒドの放散を抑制する
 シックハウス症候群や化学物質過敏症など日常生活における化学物質暴露が問題となっている。なかでも身近な建材である合板からはホルムアルデヒドが放散し,室内大気環境を悪化させている。そこで本研究では,ホルムアルデヒドの放散を抑制するため,天然の化合物であるカテキン又は尿素を合板の表面に塗布し,ホルムアルデヒドの放散速度を測定した。その結果,尿素処理をするとホルムアルデヒドの放散速度は,無処理の場合に比べて25分の1程度になることが分かり,拡散を効果的に抑制することができた。カテキンについても尿素ほどではないが抑制効果が見いだされた。

【P3079】       建材から発生するホルムアルデヒドの放散速度測定

(千葉大院自然1・国立衛研2・武蔵野大薬3・千葉大工4
○北尾奈穂子1・内山茂久2・安藤正典3・青柳象平4・大坪泰文4
[連絡者:内山茂久,電話: 03-3700-9298]

 近年,生活水準の上昇に伴い日常生活内において,新たな化学物質を用いた生活用品および建築資材が使用されている。しかし,これらの建材・施工材には多くの化学物質が含まれており,室内空気の汚染が懸念される。特に,ホルムアルデヒドは室内濃度が極めて高く,ヒトに対して刺激を与えるばかりでなく,喘息などのアレルギー症状や発がんを引き起こす疑いのある有害物質である。合板からホルムアルデヒドが放散し,室内汚染の原因となっていることは良く知られているが,その対策は充分に講じられていない。本研究では,合板表面から放散する化学物質を抑制する目的で,各種の建材に放散抑制効果が期待される物質を塗布し,塗布前後の放散速度を測定することにより抑制効果を評価した。なお,検討した化学物質は,天然素材で人体に影響のないものを選択した。

 ホルムアルデヒド放散量のJAS区分がF☆☆の合板にカテキンと尿素処理を行い,様々な温度でホルムアルデヒドの放散速度を測定した。図に各温度における放散速度を示す。 無処理のF☆☆合板は30℃の時4.4,60℃の時15 mg/m2/hの非常に速い放散速度が観測された。この合板にカテキン,尿素処理を行うと放散速度は激減し40℃の時0.16,60℃の時0.65 mg/m2/hを示した。カテキンは尿素ほどの効果は得られなかったが,明らかな放散量の減少が確認された。尿素は合板の接着剤(尿素−ホルムアルデヒド樹脂)をつくる混合物の一成分であり,尿素を補給することでホルムアルデヒドの放散が抑制されたと思われる。また,カテキンもホルムアルデヒドと反応することが報告されている。今後これらの物質の効果的な利用が期待される。

図 合板の化学処理によるホルムアルデヒド放散速度の温度変化 (F☆☆合板を使用)