◆ 新素材・   単 一 D N A を 蛍 光 画 像 に よ り 観 察 す る
 先端技術◆  

 DNA増殖技術に不可欠なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法では,DNAの二重らせん構造を加熱で一旦ほぐし,冷却により再び二本鎖に戻すプロセスを繰り返すが,その過程は視覚的に確認されていない。本研究では,マイクロ流路中でマイクロヒーターにより局所を加熱し,単一DNAの構造変化を顕微蛍光イメージング法により可視化することを試みた。λファージのDNA末端にビーズをつけ,蛍光色素で染色しておいてマイクロ流路に入れる。ビーズをレーザー捕捉して溶液を流したところ,流れ方向に沿って伸長したDNAが蛍光画像により確認された。
【1F19】 マイクロ流路中における単一λphage DNAの可視化

  (北大院理)○石川悟士・福島敦菜・上野貢生・石坂昌司・喜多村昇
  [連絡先:喜多村昇、E-mail:kitamura@sci.hokudai.ac.jp]

 
DNAを増殖させるPCR(Polymerase Chain Reaction)法はゲノム解析を含めたバイオサイエンス/バイオテク
ノロジーにおいて欠くことのできない技術になっている。DNAを増殖させるためには、DNAの二重らせん構造
を、一旦、熱的に「ほぐし」、冷却により再び二重らせん構造に「戻す」過程が必要になるが、これらの過
程を単一DNAレベルで「観た」という報告は無い。そこで、我々は微粒子のレーザー捕捉法、マイクロ流路
中における溶液の流れ、マイクロヒーターによる加熱、および顕微蛍光イメージング法を組み合わせること
により、単一DNAのこのような構造変化を捉えることが可能であろうと考えた(下図)。その第一段階として、
今回、マイクロ流路中における単一lファージDNAの可視化を試みた。
 DNA末端にビオチン−アビジン結合を介して直径2 mmのラテックスビーズを化学修飾するとともに、インターカレーション型の蛍光色素でDNAを染色した。DNAにインターカレーションしている色素は強い蛍光を示すが、溶液中に遊離している色素の蛍光強度は弱い。したがって、二重らせん構造をとっているDNAを蛍光画像として可視化できるはずである。マイクロ流路中でラテックスビーズをレーザー捕捉し、溶液を流すことにより丸まっているDNAを「伸ばし」、これを蛍光画像として捉えることを試みた。実際に、マイクロ流路中においてDNAが付着した単一ラテックスビーズをレーザー捕捉することに成功するとともに、流れ方向に沿ったDNAの伸長を蛍光画像により確認した。