◆医療・生命◆  アレルギー治療に貢献するマイクロチップ技術
 花粉症などのアレルギーは国民病ともいわれるほど大きな社会問題となっており,その治療法の開発が急
務である。著者らはアレルギー治療薬の開発のため,アレルギー反応の作用機序の一つであるアレルゲンの
刺激による肥満細胞からのヒスタミン遊離の消長を迅速にとらえる方法を開発した。すなわち,刺激物質を
反応させる部分,発生するヒスタミンを蛍光誘導体化する部分及び蛍光物質を検出する部分を集積化したマ
イクロチップを用いてヒスタミンの遊離試験を行った。従来よりもはるかに少量の試薬で迅速・高感度なス
クリーニングが可能となった。
【1F34】  肥満細胞を用いたヒスタミン遊離試験のマイクロチップ上への構築

  (東大院農学生命)○徳山孝仁、藤井 紳一郎、安保充、大久保明
   [連絡者 : 大久保明, E-mail : aokubo@mail.ecc.u-tokyo.ac.jp]

 近年、アレルギーは社会問題となり、その治療法の開発は急務となっている。いわゆる沍^アレルギーの機序として、アレルゲンなどの刺激に応じて肥満細胞から放出されるヒスタミン等の物質によって炎症が起こるということが知られており、その研究においてヒスタミンの遊離を捉えることが必須となっている。ヒスタミン遊離試験はアレルゲンを想定した刺激物質を肥満細胞に与え、刺激に応じて遊離されるヒスタミンの程度を捉える試験であり、アレルゲンの特定、及びその評価などに利用される。この試験を簡便迅速に行うことのできる手法の開発は、ひいてはアレルギー治療の発展に寄与するものと考えられる。一方マイクロチップを用いたバイオアッセイは化学反応効率が高く、集積度を容易に上げられるといった特徴を持つ。本研究ではこれらの試験をマイクロチップ上に構築し、迅速で簡便なヒスタミン遊離試験を行うことを目的とした。また、あわせて抗アレルギー薬のスクリーニングにも用いられるヒスタミン遊離抑制試験を本システムを用いて行った。
 使用したマイクロチップは多層構造とし、細胞を留め、刺激物質と反応させる部分と、刺激に応じて放出されたヒスタミンを蛍光誘導体化させる部分、蛍光物質を検出する部分からなる。チップの基材としてPDMS(ポリジメチルシロキサン)を用いた。チップ上の肥満細胞に刺激物質(C48/80)を作用させ、遊離したヒスタミンをOPA(o-phthalaldehyde)により特異的に蛍光誘導体化した。検出には蛍光顕微鏡を用いオンラインでの蛍光検出を行った。
 これにより、導入細胞数1000程度において遊離したヒスタミンを検出することができ、従来の試験管レベルの遊離反応−検出操作に対し、必要細胞数、必要試薬とも遙かに少量ですむだけでなく、作業量、作業時間においても短縮することができた。