◆医療・生命◆   植物の環境ストレスを生きたままで測定しその影響を評価する
 植物は,環境ストレスに対して様々な応答を示す。ストレスを受けた植物体内の酸化還元平衡は,酸化側にシフトすることを見いだし,ESRによりその変動を観察する方法を開発した。本研究では,カイワレダイコンを大気汚染物質である二酸化窒素,光,光と二酸化窒素の複合に暴露し,これら3種類のストレスに対する応答を測定した。ストレス特性は,二酸化窒素>光と二酸化窒素>光の順で,光は二酸化窒素による酸化的ストレスを緩和していることを示した。ストレスの応答特性を解析するこの方法は,抗ストレス植物の育種・栽培に寄与すると期待される。
【1Y29】  In vivo ESR法によるストレス負荷植物の応答特性評価

  (山形大院理工・山形大総合情報処理センター1・山形大工2)富川恵子・○伊藤智博1・尾形健明2 
  [連絡者:尾形健明,E-mail:ogata@yz.yamagata-u.ac.jp]


 植物は,環境ストレスに対して様々な応答を示す。この応答特性を解析することは,ストレスによる障害
発生機構の解明や耐性能の評価,さらには,抗ストレス植物の育種・栽培にも寄与することが期待される。
我々は,生体が生きたままで(in vivo)計測できるスピンプローブ電子スピン共鳴(ESR)法を用いて,ス
トレスを負荷した植物体内の酸化還元状態の変動を観察する手法を開発し,これまで冷却や強光ストレスに
対する応答特性を調べた。植物はストレスを受けたとき,生体内の酸化還元平衡を酸化側にシフトすること
を見出し,本法がストレス影響評価やストレス耐性能評価に利用できることを明らかにした。
 本研究では,大気汚染物質である二酸化窒素およびキセノンランプ光を,単独にあるいは複合的に暴露さ
せた植物(カイワレダイコン)のストレス応答特性を調べた。あらかじめスピンプローブ剤のニトロキシル
ラジカルを取り込ませ,それが十分に還元された後,表面コイル型共振器をもつL-バンドESR装置にセットし
た。その後,ストレスを負荷すると,プローブ剤が再酸化されてラジカルのESR信号が現れた。これは植物
体内の酸化還元バランスが酸化側にシフトしたことを意味し,ラジカルのESR信号が大きいほど,酸化的ス
トレスの影響を強く受けたことを示している。結果は,二酸化窒素>光・二酸化窒素の複合>光の順であっ
た。光は,二酸化窒素による酸化的ストレス影響を緩和したことを示唆している。