【3P66】 超臨界二酸化炭素リーチング法による固体試料中の金属元素の直接分離濃縮法;
ウラン汚染物からのウランの分離
(原研、1)原子燃料工業(株)、2)名大工、3)(株)神戸製鋼所)○目黒義弘、吉田善行、中島幹雄、
本多忠1)、北村昶1)、津島悟2)、和田隆太郎3)
[連絡者:目黒義弘、E-mail:meguro@popsvr.tokai.jaeri.go.jp]
近年、化学反応や分離化学の分野において汎用されてきた有機溶媒にかわる媒体として、超臨界C02が注目され
ている。超臨界C02は、C02をその臨界温度(31℃)および臨界圧力(7.3MPa)以上に保つことによって得ることが
でき、液体のように物質を溶解する能力と気体のように物質中に迅速に浸透、拡散する能力を併せ持つ。著者らは
超臨界C02を媒体とする固体試料からの金属の浸出分離法(超臨界C02リーチング法;SFL法)を開発した1)。同法
は、(1)酸溶液や有機溶媒を用いる必要がないために廃棄物発生量が少ない、(2)試料の細孔や隙間中の金属を迅速
かつ高効率で取り出せる、(3)分離後の金属化合物をC02媒体から容易にかつ完全に析出、回収できる、(4)大量の
試料に適用できる、などの特色を有する。
本研究では、ウランで汚染した焼却灰中のウランの分離濃縮に、硝酸−TBP錯体を反応剤として用いるSFL法を適
用した。分離法は以下の操作から成る(図参照)。(1);反応容器に焼却灰試料を採り、60℃に保つ。これに硝酸-
TBP錯体を含む超臨界C02を導入し、15 MPaで150分間静置する。試料中のウラン酸化物は硝酸−TBP錯体と反応し、
超臨界C02に可溶なウラン錯体に変換され、超臨界C02中に溶解する。(2);超臨界C02を8 mL/minで75分間流し、ウ
ラン錯体を試料から浸出、分離する。超臨界C02流を常温常圧に保った回収容器に導き、C02を気化させ、析出した
ウラン-TBP錯体を回収する。操作(1)-(2)を適宜繰り返す。焼却灰(5 g)とウラン酸化物(100 mg)を混合した模擬試
料、およびウランで汚染した焼却灰試料(10 g)を処理した結果、約99%のウランを分離、回収することに成功した。
焼却灰中のカルシウムなどはほとんど分離されず、ウランに選択的な分離法であった。
SFL法は、重金属で汚染した土壌や河川水などの修復や金属触媒などで用いられた有用金属の回収・再利用など
への適用が期待できる。
1) Tomioka, O. et al. (2001) J. Nucl. Sci. Technol. 38, 461.
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