◆新素材・先端技術◆    環境規制に対応可能な新分析法の開発
 我が国の軽油中の硫黄分に対する規制値は500ppm以下であるが,環境保全のため規制強化され,数年間に1/10の50ppm以下になることが予測されている。そのため,石油製品中の極微量の硫黄分を測定する装置の開発が望まれている。本研究では,このニーズに応えるべく装置を開発し,数10ppbレベルの硫黄分析が可能となった。原理は,試料中に金属化合物の触媒を添加し,強力なX線を照射する。硫黄化合物は分解し,触媒の金属化合物と反応し,硫化金属となり沈殿物となって試料容器の下部に凝集される。この集った箇所を蛍光X線分析する。
【3B22】  蛍光X線分析による石油試料中の10ppbレベルの硫黄分析法の開発

(理学電機工業株式会社)   ○鮎川 保弘
[連絡者:鮎川 保弘、電話:0726-93-7991]
 近年、環境に対する話題が取りざたされる中、燃料油として使われる石油製品やアルコール中に含まれる硫黄分の低硫黄化が進み、開発や管理の上でppbレベルの極微量硫黄分析が必要とされるようになった。これらの極微量硫黄分析については、試料を燃焼して、試料中の硫黄化合物をSO2/SO3の形態に変換し、電量滴定法や紫外蛍光法が用いられているが、数10ppbレベルの極微量硫黄分析
ではバラツキが大きく改善の必要性を問われている。
 本研究では、下面照射型の蛍光X線分析装置を用い、数10ppbレベルの極微量硫黄分析が可能な手法を確立した。本研究の概要を右図に示す。ここで、試料中に含まれる硫黄化合物(H2S、R-SH、R-S-R、R-SS-R、チオフェン類)に強力なX線を照射し、硫黄化合物を分解させる。そこに液体触媒(金属化合物)を同時に添加し(図1)、分解された硫黄分と液体触媒に含まれる金属とを瞬時に反応させ、硫化金属を生成させる(図2)。生成した硫化金属は試料内を沈降させ底部に集める。集めた硫化金属中の硫黄分を、下部からX線を照射して蛍光X線分析することにより、数10ppbレベルの硫黄分析が可能となる(図3)。アルコールやナフサの実試料を10個の容器詰め替え繰返し分析を行なった結果、50ppbレベルの分析において、変動係数(CV%)で10%程度の良好な結果を得ることができた。
 この原理を利用することによって、石油プロセスのきめ細
かい運転管理や、燃料電池の開発等への展開が期待できる。