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2011年度

第316回ガスクロマトグラフィー研究会 特別講演会

2011年12月2日に北とぴあ 飛鳥ホール(北区王子)にて,標題のガスクロマトグラフィー(GC)研究懇談会主催の講演会が開催された。GC墾では、毎年12月に時節に合わせた話題で特別講演会を開催している。第316回の主題は「メタボロームが拓く明るい未来,誘導体化,GC-MS分析のストラテジー」であった。天然物の有効成分探索や代謝・産生経路の解明は古くから行われていた天然物化学の分野である。メタボローム・メタボロミクスは近年の機器やコンピューターの進歩により,網羅的でスループットの高い測定が可能となり派生した手法のようであるが、バイオマーカー探索や機能性物質の探索はもとより食品の品質管理まで、幅広い分野で活用され始めたようである。前田委員長のオープニングの挨拶の後、この分野のリーダーによる主題講演6件と関連メーカーによる機器や技術の紹介の技術講演5件の講演があった。参加者は約130名であった。以下に概要を報告する。
主題講演1,「メタボロミクスで鶴岡に奇跡を」菅野隆二先生(HMT) HMT(ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ)は、慶大先端生命科学研究所のシーズにより受託分析を主に立ち上げたベンチャー企業とのこと。菅野氏の話は、メタボロミクスの始まりから他のオミクスとの違い、GC,LC,CEの使い分けから将来展望まで多岐に渡っていた。また企業の代表者らしいメタボロミクスにおけるマーケッティング戦略は、小生には肝銘が深かった。うつ病のバイオマーカー探索などの成果や山形産つや米のうまみ成分などの紹介もあった。
主題講演2,「茶系飲料を中心とした香気成分の解析~メタボロミクスの活用と前処理の簡略化~」 岡野谷 和則先生 (伊藤園 中央研究所) お茶の生産管理は、摘採した茶葉を揉みながら乾燥させる(酵素の失活)製茶と香味を作る仕上げ工程に大きく分けられるそうである。ご講演はお茶の種類の解説から始まったが、各工程の品質管理にメタボロミクスを利用し、コントロールすべきキー成分が見出されたとの貴重な実務体験に基づくものであった。お茶の緑から茶色の変色は、火入れ工程におけるアルドヘキソースなどの糖由来の成分が関係しているそうである。測定には前処理法の工夫が重要とのことで、香気成分の測定にはSPMEやFEDHS(Full Evaporation Dynamic Headspace) 法を比較検討されていた。
主題講演3,「~代謝産物としての香り~ 香辛料の揮発性成分と香気寄与成分」佐川 岳人 先生(エスビー食品(株) 商品部分析センター) 佐川氏のお話は、「香りとは!?」のヒューマンサイエンスから始まった。「香りとは物質ではない。香りとはバランスである。成分の閾値、経験から来る感情・・・」との話は、同氏が長年に渡り<香り>と向き合ってきた姿勢であり、何か哲学的な境地を感じられた。その後の話は、現在ほど普及していなかった臭い嗅ぎガスクロマトグラフを工夫しながら改良してきたこと、そしてしそ科の植物の精油の産生・蓄積する細胞のX線-CTによる解析へと進んだ。代謝産物としての精油の組成と細胞の解析結果との関係は興味深いものであった。
主題講演4,「JIS K0114 ガスクロマトグラフィー通則の改訂で新たに加わった誘導体化手法」金子 広之先生(東京化成工業) 標題の講義を、GC墾運営委員である同氏にお願いした。メタボロミクスにおいて代謝経路を解明するための同位体標識化、そして高分解能のGC/MSを利用した代謝産物の一斉分析では、誘導体化は必要不可欠な技術である。ご講演は、試料の形態別前処理から始まり、エステル化、シリル化、アシル化など具体的な操作について細かく解説していただいた。
主題講演5,「花香,花芽誘導関連分子の生合成・代謝経路」渡辺 修治先生 (静大創造科学技術大学院) 先生は、長年に渡り花香、花芽誘導関連物質などの生理活性物質を追跡されている。植物は移動できないために、防御機構、子孫の継承(受粉)、落花などに様々な整理活性物質を作り出しているとの事。受粉に必要なバラの香気成分の代謝経路の解明と、アオウキクサのオキシリピン類の分析例のご紹介があった。2-フェニルエタノールを出発原料とするバラの香気成分では、季節によって作用する代謝経路が異なることを発見したそうである。重水素標識された前駆体の注入とMSによる解析が有効であるとの事であった。 人口増加による食糧問題や砂漠化などの解決に、植物ホルモンは有用であり今後のご研究の進展を期待したいところである。
主題講演6,「メタボリックプロファイリングの精密表現型解析への応用」 福崎英一郎先生 (阪大工学研究科生命先端工学専攻) 先生は、この分野を代表する研究者のお一人であり、様々な分野の研究者と共同研究されている。メタボロミクスはゲノム情報のない植物や微生物の利用において有望な技術であるが、生命科学・有機化学・分析化学・情報科学の複合領域であり、精度を上げ共有化されるべき標準化は、測定対象が多用なために難しくスタート地点にたったばかりだと述べられていた。しかしながら、生物の培養・育成⇒サンプリング⇒誘導体化⇒分離分析⇒データー変換⇒多変量解析に渡る流れを、幾つかの事例を基に分かりやすく解説していただいた。
技術講演は次の通りであった。GC研究懇談会では、要旨集(2,000円)を配布している。詳細は、要旨集を参照していただきたい(参照先;http://www.jsac.or.jp/~gc/menu/inquiry.html
1.「キャピラリーカラム(GC)と高分解能モノリスキャピラリーカラム(LC)で見える試料のクロマトグラフィックプロファイリング」 古野正浩 (ジーエルサイエンス)
2.「Full Evaporation Dynamic Headspace (FEDHS)GC-MSによる水系試料中の親水性香気成分の分析」 落合伸夫(ゲステル株式会社)
3.「Agilent GC/MS(/MS)によるメタボロミクス」 中村貞夫(アジレント・テクノロジー)
4.「大規模解析を支援する差分解析ソフトSIEVEのご紹介」 高原健太郎(サーモフィッシャーサイエンティフィック)
5.トラップ-HSを用いたにおい分析のご紹介」 白田志保(日本電子株式会社)
講演後は会場を北とぴあ17階の山海亭に移し、飛鳥山公園や池袋の夜景を見ながら講演者を囲んでの意見交換会が開催された。講演会での積み残しの質問や技術談話が初冬の夜長に遅くまで続いていた。
特別講演会の開催にご協力いただいた企業は、アジレントテクノロジー、アルファモスジャパン、ENVサイエンストレーディング、エーエムアール、エスジーイージャパン、大塚製薬、関東化学、ゲステル、サーモフィッシャーサイエンティフィック、ジーエルサイエンス、島津製作所、信和化工、大陽日酸、テクノインターナショナル、東京化成、日本電子、日本分析工業、林純薬、ヒューマンメタボロームテクノロジーズ、LECOジャパンの20社であった。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。 

〔ジーエルサイエンス 古野正浩〕




 

第315回 関西講演会

2011年11月10日に(株)島津製作所 関西支社セミナーホールにて、「食と環境の安全・安心 ~その分析方法は正しいですか?~」を主題とした講演会が開催されました。関西地区で初めてとなるGC研究懇談会の講演会でしたが、約60名の参加者を得て、大盛況のうちに終了しました。
最初に開会の挨拶を報告者(和田 島津製作所)が行い、GC研究懇談会の歴史と今年度の活動についてお話しました。
主題講演の1題目は、「食品中残留農薬分析の現場におけるクロマトグラフィの変遷」で、斎藤勲氏(生活協同組合東海コープ事業連合)より講演がありました。様々な農薬分析法の紹介、農薬分析に用いるカラム、検出器やデータ処理等の変遷の他、分析の苦労も盛り込まれ、非常に有用で興味深いお話でした。
主題講演の2題目は「環境や食品中の生体恒常性かく乱物質の精密分析法とその毒性評価手法」で、太田壮一先生(摂南大学薬学部)より講演がありました。生体恒常性攪乱物質の分析(主にダイオキシン類)、精度管理、実試料データから見る環境、食品及び人体汚染実態、毒性評価法、アレルギー反応検出法等のお話でした。塩素化ダイオキシンだけでなく臭素化ダイオキシンまで幅広くお話いただき、非常に興味深い内容でした。
主題講演の3題目は「官能試験とフードメタボロミクスの総合評価」で、土屋文彦氏(LECOジャパン合同会社)が講演されました。食品の香味のキャラクタリゼーションと解析の一例として、GCXGC-TOFMSによるビール香気プロファイル、ホップ香気プロファイルについての多変量解析により関連付けについてお話されました。多変量解析の有用性をわかりやすく説明していただきました。
主題講演の4題目は「自動車から排出されるガス状有害大気汚染物質分析の精度管理と実施上の問題点」で、秋山賢一氏((財)日本自動車研究所)より講演がありました。有害大気物質の大気濃度、実際の自動車排ガスの分析法、複数のサンプリングバックの性能評価、毎日および年一回の精度管理について等、緻密な検討結果を紹介いただき、非常に参考になるお話でした。
主題講演の5題目は「正しい食品分析結果を得るために(分析の目的を意識して)」で、平原嘉親氏(厚生労働省近畿厚生局)より講演がありました。正しい分析を効率よく行なうための手引き、マニュアルから省略されがちな事柄に意識を払うこと、精度管理の重要性、技術の伝達など、分析者が常に意識すべき事柄をわかりやすく説明していただきました。
技術講演は4題行なわれました。1題目は「同位体希釈法について、ダイオキシン類の標準物質を参考に」で、藤峰慶徳氏(大塚製薬(株))より講演がありました。ダイオキシン標準物質のラインナップを紹介されました。 技術講演の2題目は「残留農薬分析用自動前処理装置を用いた妥当性評価について」で、栢木春奈氏((株)アイスティサイエンス)より講演がありました。農薬の抽出後の前処理を自動化する前処理装置を紹介されました。 技術講演の3題目は「香り分析に役立つ簡易濃縮ツールの紹介」で、藤村耕治氏(信和化工(株))より講演がありました。シリンジのニードル内部に吸着材をつめたもので、揮発成分の簡易濃縮ツールを紹介されました。
技術講演の最後は「新型におい識別装置「FF-2020」での偏位臭マップなどの追加機能のご紹介」で、喜多純一氏((株)島津製作所)より講演がありました。様々なにおいを特別なセンサーで検出、においの質を可視化する装置の紹介でした。 講演会の終了後、意見交換会が開催されました。大勢の参加者があり、活発な意見交換がおこなわれ、楽しい時間を過ごせました。
GC研究懇談会で初めての関西講演会でしたが、関西地区の委員の皆様(羽田委員、小村委員、藤峰委員、藤村委員、森川委員他)の多大な尽力により成功した講演会となりました。この場をお借りして、お礼を申し上げます。

古川雅直 和田豊仁(株式会社島津製作所)


 

日中韓分析研究交流会シンポジウム(韓国、済州島)開催報告

今年のCJKシンポジウムが韓国の済州島で10月31日~11月2日に開かれました。通算で8回目になります。大会会長はProf. Dong-Sun Lee(ソウル女子大学)で、韓国分析研究会、食品研究院(KFRI)とソウル女子大学の共同開催です。KFRIのDr. Joeho Haが事務局となりKFRIのスタッフが会の運営を支援してくれました。中国側団長は清華大学の林金明教授(Prof. Dr. Jin-Ming Lin)、日本側は(社)日本分析化学会の後援を受け、団長は分析化学会会長の中村洋先生(元東京理科大学)で、各国の参加者は韓国29名、中国37名、日本28名の参加がありました。新済州市のGrand Hotelがシンポジウム会場で、発表は11月1日朝8時から夕方17時半までびっしりつまっていました。午前中は代表者挨拶やプレナリー講演が広い会場で行われました。午後はポスター発表と2つの会場に分かれてシンポジウムに入り、活発な意見交換が行われました。発表は分析化学全般で、バイオセンサーからクロマトグラフィー、マイクロチップ、環境分析から応用まで多岐にわたり、口頭発表37件、ポスター発表30件と、大盛況でした。1日に集中させたため発表を全部聞く事ができず、不満の声も若干あがりました。中国は口頭発表を行いたいとの要請が強く、韓国側が時間配分に配慮してポスターを増やしたりして時間を調節し、いろいろと苦労されておりました。教授陣の発表内容は全体的にレベルが高く、国際学会への初デビューの学生や若手研究者も堂々と元気よく発表していました。少しずつ学生や若手研究者の参加が増えてきました。中国から日本に留学中の学生も参加し、この研究会を通じて研究交流が進んでいる成果もみられました。 シンポジウム前日に到着した方は思い思いに市内を散策して見聞を広めておりました。11月21日の講演終了後意見交換会があり、各国の研究者は和気あいあいと情報交換や交流を行いました。今回は中村洋先生の退職を記念して花束贈呈や、運営委員間でのプレゼント交換等がありました。 11月2日には会主催のツアーがあり、参加者達は世界遺産に登録されている日の出峯、万丈窟の奇景や特徴ある噴火口の自然、民俗村での生活等に触れて大いに見聞を広めました。1970年代に和歌山からみかんの苗木を移植し、農業指導した事が今の済州島の繁栄につながった話、蒙古(元)が日本を攻める時に済州島を植民地にして馬を持ち込み繁殖させ、今の足の短い済州島のポニーの先祖になった話など3国の繋がりを感じさせる島でした。 簡単なシンポジウムプログラムを下記に紹介します。
Oct. 31 Registration. Committee members meeting
Nov. 1、AM Room Jade
08:40 - 12:00 : Symposium I
Nov. 1, PM Room Jade & Room Amethyst(パラレルセッション)
13:00 - 15:30 Symposium II
Break 15:30-15:40
15:40 - 18:00 Symposium II continued
12:00 - 16:00 Poster presentation
18:30 - 21:00 Welcome Party - Special Event for Professor Hiroshi Nakamura - Introduction of 2012 CJK symposium by next host country
Nov. 2, 2011 (Thursday) Social program

(独)産業技術総合研究所 前田恒昭



第311回 講演会

2011年6月17日、東京都北区の北トピア ペガサスホールにて「気体サンプリングと分析の基礎から最前線」を主題とした講演会が開催されました。予想を上回る80名以上の参加者を得て、大盛況のうちに終了しました。  最初に開会の挨拶が前田恒昭委員長((独)産業技術総合研究所)より行われました。GC研究懇談会の歴史と今年度の活動についてお話がありました。 基礎講座の1題目は「気体サンプリング手法の概要」で、渡辺征夫先生(埼玉工業大学 元国立保健医療科学院) より講演がありました。気体を扱う上で必要な基礎的な知識、情報、取り扱いの注意などを非常にわかりやすくお話いただきました。そのまま教科書にしたいぐらいためになる、面白い内容でした。 基礎講座の2題目は「大気捕集用の充填剤とチューブについて」で、西島宏和氏(シグマアルドリッチジャパン)より講演がありました。気体サンプリングに欠かせない、大気捕集用充填材について、基礎から応用まで幅広くお話いただきました。たくさんある捕集管の特徴と使い分けなどの説明もあり非常に有用なお話でした。 主題講演の1題目は「VOC分析用サンプリングバッグの新規開発」 で、石渡直明氏(三菱化学)より講演がありました。VOC分析のために、新たに開発したサンプリングバッグについて、新しい材質の開発から製品の特徴まで、開発の秘話も含めてお話いただきました。 主題講演の2題目は「大気や自動車排出ガスのバッグ捕集(テドラーバッグ代替バッグの性能)」で、秋山賢一氏(日本自動車研究所)より講演がありました。これまでサンプリングバッグでよく使われていたテドラーバッグのほか、複数のサンプリングバッグの特性を、詳細に評価されており、サンプリングバッグの選択のヒントになるだけでなく、気体分析についても非常に参考になるお話でした。 主題講演の3題目は「自動車内装材の放散測定の紹介」で、杉田和俊氏(三菱化学アナリテック)より講演がありました。JASO M902 2007(自動車技術会) に準じた測定法について、写真も多用された詳細で、非常にわかりやすいお話でした。  技術講演は3題行なわれました。1題目は「ガスサンプリングにおけるサンプリングバッグの選択」で、岩崎貴普氏(ジーエルサイエンス)より講演がありました。複数のサンプリングバックについて、各バッグのブランクの質、量の違いから、ブランク除去法についても言及されていました。  技術講演の2題目は「ガス濃縮器へのガスサンプリングの仕方」で、津田孝雄氏(ピコデバイス) より講演がありました。人の様々な部位から発生するガスをいかに被験者に負荷をかけずに効率よくサンプリングするかの手法のほか、ラットの尻尾皮膚、野菜からの発生ガスのサンプリング及び分析法についてお話されました。 技術講演の最後は「MiniCanTMおよびガラスジャーを用いた気体試料サンプリング」で、土屋敦裕氏(西川計測)より講演がありました。少量のガスサンプリング用の、100mL~1L程度の小型のキャニスター容器の有用性についてお話されました。 講演会の終了後、意見交換会が開催されました。大勢の参加者があり、活発な意見交換がおこなわれました。参加者の親睦も図られ、楽しい時間を過ごせました。

和田豊仁 相川浩之(株式会社島津製作所)

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