第1回環境分析研究懇談会バーチャルワークショップ
演題番号4

LC/MSを用いた臭素系難燃剤テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)の定量法検討

(株式会社 住化分析センター)吉田 寧子、村上 雅志

 臭素系ダイオキシンの発生源となりうる臭素系難燃剤の中で、最も生産量の多いテトラブロモビスフェノールAについてLC/MSを用いた定量法を検討した。結果としてGC/MS法と比較して誘導体化が不要で簡便かつ高感度・高精度な定量分析を行うことが可能であったので、報告する。

【はじめに】
 テトラブロモビスフェノールA(以降TBBPAと略す)は、 臭素系化合物の難燃剤としては世界で最も多く生産されており、TBBPAとその誘導体に対する需要は年間6万トンに達する。TBBPAはABS、エポキシ、ポリカーボネートの各樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、フェノール樹脂、接着剤、その他として反応性あるいは添加難燃剤として用いられており、臭素系ダイオキシンを生成させる可能性のある物質である。

  Fig.1 Tetrabromobisphenol Aの構造

【実験及び結果】
MS測定条件の検討:LC/MS (Agilent社製 HP1100MSDシリーズ)を用いて、対象化合物のESI MS SCANをポジティブ及びネガティブモードにて測定した。その結果ネガティブモードにてM-Hの特徴的なイオンが観測された。また、フラグメンター電圧を変化させたところ、ほぼ比例してピーク強度が増大する事が確認された。
  Fig.2 Tetrabromobisphenol Aのマススペクトル
  Fig.3 Fragmenter電圧とピーク面積

LC/MS測定条件
HPLC Solv : A(H2O)/B(MeOH) 0(min)30%B→10(min)95%B→25(min)95%B Flow : 0.5mL/min
   Column : SUMIPAX ODS J-05 5μm×4.6mm×250mm Oven : 40℃ Injection : 50μL
MS Ionization Mode : ESI Polarity : Negative Fragmenter : 150eV Neb Pres : 10psig
  SIM ion : 542.7 , 540.7 Gas Temp 320℃ Drying Gas : 12.0L/min

上記LC/MS条件にて標準溶液を測定し、検量線を作成したところ、2〜200μg/Lの範囲でR2が0.999と良好な相関を示した。また、低濃度標準溶液5回繰り返し測定から得られた標準偏差の2倍より求めたIDL(Instrumental Detection Limit)は1.1μg/Lで、試料を400mL用いて最終液を1mLとした場合には0.0028μg/Lの検出下限値を得ることが可能である。また、繰り返し測定から得られたC.V.値は4.8%であった。

  Ffig.4検出下限付近濃度(2μg/L)の標準溶液測定チャート
【まとめ】  TBBPAはこれまで主にGC/MSを用いて分析方法が検討・報告されてきたが,本検討によりLC/MSを用いた場合にも感度良く、また良好な再現性のもとで分析することが可能であることが示された。また、誘導体化の処理が必要無い為、前処理所要時間を短縮することが可能である。今後は実試料として水質試料及び底質試料を用いて検討を進める方針である。

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