第1回環境分析研究懇談会バーチャルワークショップ
演題番号2

カルバメート系農薬LC/MS自動一斉分析分析の試み

(Waters Corporation*、日本ウォーターズ株式会社**)Kate Yu*, Jim Krol*, Michael Balogh*, ○金井みち子**

【目 的】
 EPAのメソッドM531.1 では HPLC-ポストカラム誘導体化蛍光検出法でカルバメート系農薬の分析を行っている(図1参照)。この場合誘導体化部位の N-メチル基があることが検出の絶対条件となる。そこで誘導体化の必要ないLC/MS (ESI法)用いて52 種類のカルバメート関連化合物の一斉分析法確立を試みた。逆相HPLCでの条件検討以外はすべてQuanLynxソフトウェアを用いて自動で行った。すなわちモニターするイオンの選択、コーン電圧最適化、MS取り込みメソッド作成、定量解析メソッド作成、分析及び解析、レポート作成の一連の作業をすべて自動で行った。その結果52化合物中46化合物が十分な感度と選択性で検出可能であった。

     
【対象化合物と分析条件】
 一斉分析を試みた化合物を表1に示す。52化合物中緑で示した32化合物はN-メチル基を持たないため、EPAメソッド M531.1で分析することができない。LC/MS分析は Waters 2795セパレ-ションモジュール、Waters2996 フォトダイオードアレイ検出器、Waters ZQ マス検出器(いずれもWaters Corp., Milford, MA, USA) を用いた。分析条件を表2に示す。
     
【QuanLynxによるメソッド開発】
 QuanLynx は Waters LC/MS のデータシステム MassLynx のオプションソフトウェアでいくつかの部分からなっている。 QuanOptimize では、定量したい化合物の標品・化合物名・分子量をインプットすると、自動的に Flow Injection Analysis を行なってコーン電圧の最適化、モニターイオンの選択、MS取り込みメソッドの自動作成を行なう(図2参照)。 そのメソッドを用いて検量線用サンプル、QCサンプル、未知濃度サンプルを分析すると、ユーザーがあらかじめ指定した解析メソッドテンプレートに基づいて解析メソッドの自動作成・自動波形解析・定量計算が行なわれる。その結果をQuanLynxブラウザ(図3参照)で確認、必要な場合は再計算を行なう。 すなわちHPLCの分離法検討以外はマニュアルで行なう必要が無い。 モニターするイオンの質量数が異なればベースライン分離の必要が無いので、フルスキャンのLC/MSでの分離法検討はUVや蛍光検出法を用いるよりはるかに効率的である。
      
【結果】
 分析結果の一例として、図4にモニターイオンの質量数が同じ m/z 233 である Flumeturon、Diruon、Siduron の 5ppbのクロマトグラムと検量線を示す。
52化合物のうち、46化合物は QuanLynx を用いた一斉分析が可能であった(表3)。46化合物の検出限界は0.09ppb(Eserine)〜41.7ppb(DMDTC)で、うち36化合物が 5ppb以下であった。また水道水へ20ppb添加したサンプルから計算した添加回収率はすべてEPAのガイドライン範囲内(70-130%)であった。
分析できなかった6化合物については他のイオン化法、あるいは他の分離法検討が必要である。
      


発表者連絡先
日本ウォーターズ株式会社 金井みち子 E-mail: michiko_kanai@waters.com